朝鮮時代に退行する韓国

日本留学が反民族行為?

 最近、韓国の作家・趙(チョ)廷来(ジョンネ)が「日本に留学した者は民族反逆者だ」と発言して物議を醸している。趙は植民地解放から韓国動乱後までの時期を描いた長編小説『太白山脈』で知られる作家だ。

 こうした発言が出てくるような最近の韓国の反日風潮に対して李康浩(イガンホ)韓国国家戦略フォーラム研究委員が月刊朝鮮(11月号)で「朝鮮時代へ退行する韓国」を書いて警鐘を鳴らした。

 李康浩研究委員は「それでは日本留学した文在寅大統領の娘はどうなるのか」と軽くジャブを飛ばしながら、李朝末「当時、東洋文明開化の先頭走者であった日本」に留学し、そこで広げた見識を基に祖国の方向性について朝廷に「上訴文」を出した孫秉熙(ソンビョンヒ)を例に挙げて説明した。

 孫は日清戦争後、日本とロシアの衝突が不可避となった情勢で、朝鮮は日露どちらに付くかについて「日本に協力することが国の未来のために唯一賢明な選択だ」と主張した。日本に協力することでロシアの支配下に入ることを免れ、それどころか「戦勝国」として確かな地歩を確保できるとしたのである。その孫を親日派であり「反民族的親日行為を行った」と断罪することはどうみても間違いであり無意味だと李研究委員は説いたのだ。

 孫は天道教の創始者、第3代教主、そして三一運動の指導者の一人だ。日露戦争の結果は孫が予測した通りとなったが、彼の上訴文を蹴って親露路線を取った朝鮮は「日本の属国」になる運命を確定してしまった。

 孫は朝鮮のためを思って日本と手を組むよう訴えた。それを「親日派」に組み入れようとする趙廷来の極端で盲目的なレッテル貼りには驚くほかない。論理を超えた好悪感情が国の存廃よりも優先されるのだろうか。

 「朝鮮支配層の親露路線が朝鮮の亡国を加速化させた主犯」だが、驚くべきは「今日の韓国人らは当時のこうした事実をほとんど知らない」ということである。なぜなら「歴史で教えることもない」からだ。他国の歴史教科書を云々(うんぬん)するどころの話ではない。

 米中の対立、米国大統領選挙、日本の政権交代、任期が近づく文在寅政権、「再び国際情勢の激変を迎えている」この時期に、過去に遡(さかのぼ)ってまで親日狩りに狂奔する姿は、李研究委員には「朝鮮時代に退行」したものと映る。それは多くの韓国民も共感するものだろう。

 編集委員 岩崎 哲