タイ人の人気旅行先1位に日本

ビザ免除と円安が後押し

 欧州の大手旅行検索サイト、スカイスキャナーはこのほど、タイ人の最も人気のある旅行先は日本との検索データによる解析結果を明らかにした。2位以下は、米国、英国、中国、韓国だった。日本が人気スポットに急浮上したのは、昨年解禁されたビザ免除と円安が後押ししたものだ。
(池永達夫)

なじみの和食を本場で堪能

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バンコクの大戸屋。こうした日本食屋がタイ人の日本旅行を
後押ししている

 日本はタイ人の家族連れでの人気旅行先でも1位だった。2位以下は香港、シンガポール、米国、英国で、個人旅行好感度の高い米英にアジアの先進国・地域の香港、シンガポールが割って入った感じだ。

 また2014年の旅行先でも日本が国別1位を保持。2位以下は韓国、モルディブ、ギリシャ、米国と続いた。都市別では1位東京、2位以下はソウル、大阪、ボストン、サンフランシスコだった。

 日本への旅行好感度が高いのは、タイに比較的近く自然が豊かという地理的要因と同時に、楽しいショッピングやおいしい食事、歴史的建造物やディズニーランドなど遊園地・テーマパークといった豊富な観光資源がタイ人を日本へと押しやる誘因として働いている。

 無論、短期滞在で日本を訪れるタイ人に対し昨年7月からビザが免除されたことも大きな要因になっている。今まで難しかったビザ取得の壁が撤去され身近になったことで、人々の関心が高まっているのだ。さらに、これに拍車を掛けているのが進む円安で、重くなったタイ人の財布という事情もある。

 とりわけ3月下旬から4月上旬にかけての花見シーズンにおけるタイ人観光客の訪日数が、今年は大きく伸びる趨勢(すうせい)にある。これまでタイ人観光客は、旧正月のソンクラーンのある4月を中心として動いてきた背景があるが近年は、前倒しで来る観光客が急増している。どうせ行くなら、その国の最も美しい時を選びたいという旅行者心理が働いているためだ。とりわけ日本の花見シーズンは、花冷えといわれるような寒さがまだ残っているケースもあり、この時期のタイの極暑とは違った異国情緒を楽しめる時期でもある。

 なお海外旅行のお楽しみというと通常、「食事とショッピング」だ。その点、繊細で眼(め)を楽しませてくれる和食など、日本の食文化は歴史に縁取られた厚みがある。

 ただ本来、食というのは保守的なものだ。だから普通の人は、珍しいものを食べたいと思うより、普段食べているもので、一工夫加えたものとか、もっとおいしいものを食べたいという欲求が強い。

 その点、バンコクには日本食店舗があふれている。カレーのココイチに餃子の王将、牛丼の吉野家、それに料亭並みの店構えをした大戸屋など目白押しだ。いずれも日本では庶民の味としてなじみ深い外食チェーン店舗で、海外展開した結果だ。その味に慣れたタイ人とすれば、本場の日本でラーメンやしゃぶしゃぶ、寿司(すし)、天ぷらといった日本食の定番を食べたり、夕張のメロンをつついたりして旅の醍醐味(だいごみ)を味わうことで日本を実感するのだ。

 何よりタイでは日本のテレビ番組が大量に放映されている。中でもタイ人に人気なのは、グルメ番組や旅行番組だ。それが毎日のようにタイの電波に乗って放映されている。街を走る日本車やあちこちにある日本食レストランだけでなく、生活の中に通常の日本が存在しているのだ。とりわけタイ人が日本に抱いているエクセレントで安心して食べられる「食のブランド」のイメージは濃厚だ。その日常の日本を、本場の日本で味わってみたいという欲求が日本への旅行熱を高める熱源になっている側面がある。

 また昨年春から始まっている飛行機の増便やチャーター便による座席供給量の拡大や地方自治体による積極的な観光誘致策もこうしたタイ人の日本旅行熱を高める効果を発揮している。