中国軍 「接近阻止」能力を向上
台湾へ軍事侵攻の可能性も
米が年次報告書で強い警戒感
米国防総省は2日、中国の軍事・安全保障分野に関する年次報告書を公表した。中国は台湾有事などをにらみ、ミサイル攻撃能力や宇宙の軍事利用を進め、西太平洋への米軍の展開を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」能力を強化していると指摘。台湾への圧力を強める中、軍事攻撃の可能性も排除していないと強い警戒感を示した。
報告書では「中国は2035年までに軍の近代化を完了し、49年までに『世界第1級』の軍隊にすることを目指している」と分析。陸海空軍やロケット軍の戦力を向上させ、「米国に対抗できる戦力になりつつある」と強調した。
A2AD能力については、米領グアムを射程に収める「東風26」や米国の空母を攻撃できる中距離弾道ミサイルの開発を進めていると指摘した。
その上で、「現在は(沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ)第1列島線内で強固だが、それを太平洋地域のより深くまで広げることを目指している」とし、ミサイルなどに加え、サイバー攻撃能力の向上や宇宙の軍事利用を強化しているとした。(5面に関連記事)
また、中国は昨年、ドミニカ共和国、ブルキナファソ、エルサルバドルに台湾と断交させ、中国と国交を結ばせるなど蔡英文政権への圧力を強めていることに言及した。
中国は「平和的な統一を唱えているが、軍事力を行使することを決して放棄したわけではない」とし、空域・海上封鎖や台湾軍に対するサイバー攻撃、台湾本土への大規模な上陸作戦など多様な選択肢を持っていると指摘した。
軍事技術開発については、中国が国家戦略として掲げる「軍民一体」で人工知能(AI)や無人システムなど最先端技術の開発を加速させていると警告。また、「スパイ活動を通して軍民両用や軍用の最先端技術を盗んでいる」と非難した。
報告書によれば、中国は昨年8月、マッハ5以上で飛翔し、方向転換も可能な極超音速兵器の実験にも成功。中国がこうした極超音速兵器のほか、電磁レールガン、指向性エネルギー兵器、衛星攻撃能力などの「破壊的な軍事能力の開発を進めている」と警鐘を鳴らした。
(ワシントン 山崎洋介)