習政権、文革以上にウイグル人弾圧

世界ウイグル会議カーディル議長、中国の白色テロを告発

 中国から逃れた亡命ウイグル人を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長(68)=米国在住=はこのほど、都内の参議院議員会館で記者会見を開き、強権統治を試みる習近平政権は文革以上にウイグル人弾圧に傾斜し、無人機を使い抗議のウイグル人を殺害している実態を白色テロだとして告発した。また同議長は、国連に対しても「歴史的な問題は追及するのに、なぜ現在進行形の人権侵害は追及しないのか」と国際機関として責任放棄している実態に疑問を呈した。(池永達夫)

無人機使い殺害、「民族浄化」も

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記者会見する「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長=10月19日、東京都千代田区(時事)

 カーディル氏は、中国当局が新疆ウイグル自治区一般の宗教活動も非合法化するなど、取り締まり強化に動いていると強調した。ウイグル人にとってイスラム教は、民族のアイデンティティーを懸けたものだ。ウイグル人にとってイスラムがなくなるということは、ウイグルが共になくなることを意味する。

 こうしたウイグル人の抗議活動に対しては、治安当局が無人機などによる攻撃で殺害していると非難。カーディル氏は「今、彼らはウイグル人に対する銃殺の権限を末端の警察官に与えている。2001年の米中枢同時テロ以降、反テロを利用して無実のウイグル人を大量に逮捕し、テロ分子を処刑したという名目で人権侵害を行っている」とした上で、未婚のウイグル人女性を就職の名目で中国本土に強制連行し「民族浄化」を行っていると糾弾した。

 カーディル氏が特別に矛先を向けるのは国連だ。

 「私は国連に驚いている。歴史的な問題を彼らは追及するが、現在行っている殺戮(さつりく)に対しなぜ沈黙しているのか。なぜ現在進行形の問題については追及しないのか。大国のやっていることには何もタッチしないという態度なのか。中国当局はウイグルの資源を略奪し、その金を世界にばらまいて、民族浄化を正当化している」と指摘した。

 カーディル氏は「現在投獄されているウイグル人の数は」との質問に対し、「中国の弾圧はすさまじく、公表されているデータの統計では(建国後の)66年間で百数十万人の犠牲を出している。最も犠牲が多かった期間の一つが習近平政権の2年余りだ。1964年から始まった原爆実験の犠牲者も入れると莫大(ばくだい)な数になる」と答えた。

 さらにカーディル氏は、昨年7月、カシュガル地区ヤルカンド県で起きた当局による虐殺事件の詳細を語った。

 イスラム教のラマダン(断食月)明け直前、12人の女性や子供たちがある家に集まり、夜の祈りをささげていた。中国当局は宗教活動を非合法化して取り締まっており、ある村人がこれを密告。警察の特殊部隊がその家に押し入り、幼児からお年寄りまで殺害した。役場に抗議に行った男性たちも殺害され、さらに広まった抗議活動に対しても無人機を使って相当な数を殺害した。ヤルカンドで殺害されたのは2000人以上だと証言した。

 なおカーディル氏の夫であるシディック・ハジ氏は6年前、本紙に対し「中国が建国を果たす直前の1949年8月26日、東トルキスタンのリーダー6人が毛沢東と話し合いを持つ際、スターリンからモスクワ経由で北京に入るように言われるが、その途上でKGB(旧ソ連秘密警察)に殺害された資料がある」と動乱期の秘史を明らかにしたことがある。

 亡命先の米国では、不審車が3度バックしてぶつかってくるという不自然な交通事故で大けがをし、8年前の初訪日の折には、送り込まれた刺客から危うく毒殺されかけたこともあるカーディル氏の「ウイグルの母」としての訴えは、「中国共産党の嘘(うそ)と暴力」を白日の下にさらしている。炭鉱では空気の汚染度を知らせる「カナリア」が置かれたものだが、カーディル氏の存在そのものが「中国の強権統治」の実態を世界に知らせる「現代史のカナリア」にも見えてくる。

 多くの人は、職を失ったり家族の小さな幸せが崩壊するのを恐れ、中国共産党の圧政に対し見て見ぬふりを決め込み、口をつぐんでいる。だが資産を奪われ、実の子供2人が中国の牢獄につながれたままという逆境をものともせず、民族解放の大義のために自己犠牲をいとわない義人もいる。