キャンディーで児童ら被害 比各地で集団食中毒相次ぐ
認可で製造、路上で販売
フィリピン南部ミンダナオ島にあるカラガ地方の各地で、同じ製造元のキャンディーを食べた約2000人の児童たちが、集団食中毒を起こす事件があった。食中毒事件が日常茶飯事となっているフィリピンでも、これほどの大規模な被害は珍しく、社会に波紋を広げている。キャンディーの製造元が、厚生省食品薬事管理局(FDA)の認可を受けていないなど、ずさんな管理体制下で製造された食品が、広く流通している実態も浮き彫りとなった。(マニラ・福島純一、写真も)
集団食中毒があったのは北スリガオ州、南スリガオ州、南アグサン州にある学校で、10日にドリアン風味のキャンディーを購入して食べた児童たちが、次々と腹痛や吐き気などを訴えて、病院に運ばれる事態となった。問題のキャンディーは、学校の近くに車で乗り付けた物売りたちが、児童たちに格安で販売していたとみられている。警察はこれまでに、販売に関与した8人を拘束し、食品安全基本法違反などの疑いで調べている。
現地からの報道によると、キャンディーの製造を行ったのは、ドリアンの産地として有名なダバオ市にある製造業者「ウェンディーズ」で、事件の数日前に一人の顧客から大量の注文を受け取ったという。その後、さらに追加の注文があり、バスを使って現地にキャンディーを届けた。製造責任者は、地元メディアを通して被害者に謝罪したが、出荷時に商品の品質に問題はなかったと主張。さらに、ニュースで見た商品の包装が変更してあることを指摘し、販売者が現地で開封作業をした時に、食中毒の原因となる細菌が混入した可能性を指摘した。
FDAが調べたところ、回収したキャンディーからブドウ球菌が確認された。しかし、混入したのが製造過程なのか、包装を詰め替えた時なのかは分かっていない。また製造業者がFDAの認可を受けずに、民家の一部を使って6年間にわたってキャンディーを製造していたことも分かり、直ちに営業許可が取り消され、製造施設は閉鎖された。製造業者は刑事事件として告発される見通し。当局が製造現場から水を回収して、細菌の混入がないか調べている。
またキャンディーの販売には、地元のキリスト教団体が関与しており、販売員の多くが教団のメンバーだったことも分かっている。販売に使った車両も教団の所有だった。逮捕されたメンバーは教団の指示で販売を行ったと証言しており、なぜ学校を中心に販売していたのかなど、当局が教団の責任について調べている。
ほかにもフィリピンでは、各地で似たような集団食中毒が発生しており、食品の安全性の問題が浮き彫りとなっている。2日にはパンガシナン州で、学校付近で売っていたキャンディーを買って食べた児童114人が、吐き気や目眩(めまい)などの食中毒症状を訴えて病院に運ばれる事件があった。回収されたキャンディーを調べたところ、賞味期限の表示が消されていたという。
一方、マニラ首都圏ケソン市でも16日、学校の敷地内で男が売っていたキャンディーを買って食べた高校生の男女8人が吐き気などの食中毒症状を訴えて病院に運ばれ、そのうち3人が集中治療室に入った。製造元は不明だという。
相次ぐ食中毒事件を受け当局は、食品の賞味期限や包装状態などをよく確認してから、食べるよう市民に呼び掛けている。しかし、フィリピンでは、当局の認可を受けずに、自宅で作った菓子などの食品を路上などで販売する習慣がある。ずさんな管理状態から食中毒になるケースが後を絶たず、FDAにとって、頭の痛い問題となっている。