30日からトルコ大使公邸でエルトゥールル号展
トルコナショナルデー
きょう90回目のトルコ独立記念日
トルコ共和国はきょう、90回目となる独立記念日(ナショナルデー)を迎え、国内外で盛大な祝賀行事を行う。ヨーロッパ大陸とアジア、アフリカの3大陸の結節点に位置するトルコ共和国は、これまで東洋文明と西洋文明がシルクロードを通じて行き来した地政学的にも重要な「東西の十字路」である。この特集では、トルコの人々が日本人に親しみを感ずる起点となった大悲劇「エルトゥールル号事件」を取り上げ、日本とトルコの関係を考えてみたい。
(企画・制作=世界日報社企画開発部)
(資料提供=駐日トルコ共和国大使館)
東西十字路に位置する親日国家
駐日トルコ共和国大使館は明日30日(水)から11月19日(火)まで、東京・渋谷区神宮前にある大使公邸を会場に特別展示「エルトゥールル号展」を開催する。
会期中は土日・祝日を除き、10時から17時まで開場し、エルトゥールル号が台風で沈んだ和歌山県串本町沖の海底から引き揚げられた品々や貴重な関連写真などを公開する。
この展示の副題は「トルコと日本――友好の航路」となっている。1890年9月16日、オスマン帝国のフリゲート艦「エルトゥールル号」が、スルタン・アブドゥル・ハミトⅡ世から明治天皇への親書と勲章を献上するという大任を果たして帰国の途に就いた矢先、本州最南端の和歌山県串本町沖で台風に巻き込まれ、猛烈な波浪と強風のため航行できなくなった。古来、地元漁師に恐れられていた岩礁に衝突してしまい、機関室は爆発。500人をはるかに超える犠牲者を出す大惨事となった。当時の地元漁民が不眠不休で献身的な救助・介護活動を行い、69人が一命を取り留めた。事件後、生存者は全員日本の巡洋艦で無事トルコへの帰国を果たした。
串本町ではこの後、慰霊碑が建立され、5年ごとに追悼式典を行っている。事件当時の救助活動が両国の友好的交流の発端となった。
この感動的な一連の出来事を映画にしようという動きもあり、現在大阪の映画制作会社が中心となって準備中だが、クランクインや映画公開日もまだ決定していない状況だ。
【注】展示会場(トルコ大使公邸)へは入場無料だが、セキュリティーの関係上、身分証明書を携帯した方が無難。
【エルトゥールル号事件】 日本とトルコの間では、1887年(明治20年)に小松宮彰仁親王・同妃殿下が欧州御訪問の帰途、当時のオスマン帝国を公式訪問された。これに対する答礼として、1890年(明治23年)アブドゥル・ハミトⅡ世が特使としてオスマン提督を軍艦エルトゥールル号で派遣したが、同号は帰途、紀州・串本沖で台風に遭遇して沈没し、浜辺で地元の日本人漁民らがトルコ人水兵らを助けようとした。乗組員587人は死亡したが、生き残った69人は日本側の官民挙げての手厚い救護を受け、日本の巡洋艦でトルコに無事送還された。この事件以来、両国は友好関係にある。
1985年(昭和60年)3月、イラン・イラク戦争の時、テヘランで孤立していた邦人を救出するために、トルコ政府が特別機を差し出してくれたのは、同号事件に対する恩返しとの見方がある。同号事件からちょうど120年の節目に当たった2010年は「トルコにおける日本年」と定めて数々の記念行事がトルコ国内で開催された。
第90回独立宣言記念日に寄せて
トルコ共和国特命全権大使 セルダル・クルチ
日本は重要インフラ建設に貢献
90年近い着実な歩みを経て、トルコは今、建国の父、ムスタファ・ケマル・アタチュルクの理想とビジョン、すなわち、世俗主義の民主国家になること、欧州連合(EU)への正式加盟を目指しながら欧州および欧州・大西洋社会の活動的な一員になること、そして、活力ある民間部門や若い世代によって支えられるダイナミックな市場経済の国になることを実現した姿を示して立っています。今日、トルコは世界第16位、欧州第6位の経済大国であります。
アジア大陸の西と東の端に位置しているトルコと日本は、平和、民主主義、法の支配、そして全人類のための安定と繁栄を基盤とする外交政策において、共通の理想と目的を分かち合っています。両国はまた、さまざまな国際問題に対して共通のアプローチで臨んでいます。
日本は、東アジアにおけるトルコの一番古い友人です。トルコと日本民族の間の歴史的友情は、日本への親善訪問のための航海の帰路、1890年に和歌山県串本町沖合で岩礁に激突したオスマン帝国海軍の軍艦エルトゥールル号の悲劇から始まりました。それ以来、両国民は、災難をさえ乗り越えて、さらなる不動の友情と連帯感を導き出すよう常に努力をしてきました。
今年、トルコ大使館は、エルトゥールル号遭難事件を記念して、特別展示会を催そうと企画しています。これを通じて、私たちは、トルコと日本が共有するエルトゥールル号の特別な存在感と重要性についての意識を高めるつもりです。
5月の安倍晋三首相のトルコ訪問時に宣言された「戦略的パートナーシップ」は、特に経済面で両国の関係をさらに強め、高めていこうとするトルコと日本の政府の共通の意思を示すものであることを強調したいと思います。
私たち2国間の経済連携協定(EPA)のプロセスは、この共通の政治的意思の表れなのです。それによって、大きな潜在力すべてを開花させることができます。
日本は、トルコにおける重要なインフラと開発プロジェクトの長年のパートナーです。このことに関しては、最新の顕著な例は「マルマライ」鉄道輸送計画で、これは、大部分が国際協力機構(JICA)と日本企業双方によって資金が出されて建設が行われています。「マルマライ」は今日(10月29日)、トルコ共和国独立90周年記念日に営業開始することになっています。この大規模な運輸インフラ・プロジェクトは、イスタンブールのアジア側と欧州側を結ぶボスポラスの海底横断プロジェクトと共に、西ヨーロッパから東アジアまでの切れ目ない輸送、すなわち、歴史的「シルクロード」を現実にすることによって、この歴史都市ばかりでなく、全世界の役に立つようになります。
もう一つのインフラ・プロジェクト、「イズミット湾橋」、これもまた、日本企業によって立案され、運営されているのですが、世界で4番目に長いつり橋になります。
このような例の中の筆頭は、日本が建設のための独占交渉権を与えられたシノップ原子力発電所プロジェクトです。そのようなプロジェクトは、科学、技術、そして訓練ばかりでなく、サービスや産業の分野にわたる広大な範囲に、遠くまで及び、長く続く相互作用をもたらします。これらの大規模プロジェクトは、両国の国民と政府の間で長年かけて育まれた友情と連帯によってすでに活発化しているトルコ・日本間の経済的、商業的、科学的、そして技術的関係に相乗効果をもたらすに違いありません。
教育は、トルコ政府の最優先事項の一つです。2万5000米ドルを1人当たり国民所得の目標にしている国として、トルコはまた、教育、技術革新、そして、研究開発の分野で日本との協力強化を切に願っています。
2014年を両国の文化交流をさらに向上させる好機とみなしています。この年は、トルコ・日本間の国交樹立90周年に当たるからです。観光は、文化交流のさらなる重要なツールでありますが、これも両国民の相互理解と友情に大きく貢献します。2013年11月4日からのイスタンブール・東京間を結ぶ新規のトルコ航空毎日運航便開始が迫ってきていますが、トルコを訪れる日本人の数が現在の20万人レベルを超えるであろうと、自信を持っています。
トルコと日本両国民の協力強化は、両国ばかりでなく、国際的な平和、調和、そして、全体の繁栄に資することは疑いありません。