就任4年目、依然高支持率のアキノ比大統領
経済順調だが広がる格差
2014年を迎え、残り任期が約2年半となったフィリピンのアキノ大統領。依然として高い支持率を維持しているが、昨年は多発する自然災害や、多数の国会議員が関与する汚職疑惑などへの対応に振り回された1年でもあった。経済が順調な成長を見せているが、貧富の差は広がり貧困の改善は難航している。反政府勢力との和平交渉も順調な滑り出しから一転し、計画の遅延が表面化している。
(マニラ・福島純一)
汚職根絶・災害復旧 国民に協力呼び掛け
民間調査会社のパルスアジアが13日に発表した、アキノ大統領に関する世論調査で、支持率が74%だったことが明らかとなった。昨年9月に行われた調査の79%から6ポイントの減少となったが、大統領府は「4人のうち3人のフィリピン人が大統領を支持している」と、依然として高い数値であることを強調した。この調査は、昨年11月にフィリピン中部を襲った台風30号による災害の約1カ月後に行われた。災害では、政府の遅い対応に批判も集まったが、依然としてアキノ大統領への信頼が失われていないことが明らかとなった。
経済面では昨年、フィリピン証券取引所の総合株価指数が、過去最高となる7000の大台を突破するなど、好調な経済成長を印象付けた。さらに世界銀行が昨年10月に発表したビジネス環境に関する調査では、前回の138位から108位に飛躍的に上昇し改善が評価された。米格付け会社ムーディーズもフィリピンの格付けを「Ba1」から「Baa3」に格上げするなど、アキノ大統領による経済成長への取り組みは、高い評価を得ている。
このような経済発展を受け、自動車販売も好調を示している。フィリピン自動車工業会によると、昨年の新車販売数は、史上初となる21万台に到達しており、自動車を購入できる中間層が増加している様子もうかがえた。
しかしその一方で、民間調査会社のソーシャル・ウエザー・ステーションが発表した貧困に関する世論調査の結果によると、自分の家庭が貧しいと感じている国民が55%となるなど、前回の50%よりも増加し、アキノ政権下で最も高い数値を示した。食に関して貧しさを感じた国民も、前回の37%から41%に増加した。過去にない経済成長を成し遂げている一方で、貧困層に富が配分されない社会構造は改善されず、国民の経済格差が広がっている印象だ。依然として国内で満足できる収入を得られる仕事は限られており、国民の1割と言われる多くの人々が、海外への出稼ぎを強いられる状況は、まだ続きそうだ。
一方、国内の安定に欠かせない反政府勢力との和平問題は、順調とは言えない状況が続いている。日本政府の仲介によって、アキノ大統領と反政府勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)のムラド議長の非公式会談が実現し、ようやく再開されたMILFとの和平交渉は、2012年に和平の「枠組み合意」に達し、急速な進展を見せた。その後、天然資源の配分や、武装解除などに関する付属文書について、マレーシアの仲介の元で話し合いが続けられ、昨年中にも包括的な合意に達するとの観測もあったが、「富の共有」に関して交渉が難航するなど、既に当初の予定よりも1年以上も計画が遅れる結果となっている。
さらに和平合意に反対するMILF分派による反政府活動も依然として続いており、今年中に包括的な合意に至れるかも不透明な状況だ。アキノ大統領の任期終了までに和平合意に達することができなければ、次の政権で交渉が白紙に戻る可能性もあり、交渉団はさらに作業を急ぐ必要に迫られている。
先月30日に、国民に新年のメッセージを送ったアキノ大統領は、その中で、汚職撲滅運動や経済成長などの成果を強調する一方、2年半後に迫った自身の任期終了をバスケットボールの「最後の2分」と例え、残された時間が少ないと説明。国民に汚職根絶や、災害の復旧などの目標達成のため団結を強く求めた。