エボラ熱から回復した米人女性が語る、未承認薬で助かった喜び

 ドイツの国際公共放送「ドイチェ・ヴェレ」が10日、リベリアでエボラ出血熱に感染後、治験薬「Zmapp(ジーマップ)」を投与され回復した米国人ナンシー・ライトボルさんと会見、以下のように報じた。

 ――リベリアでは、最初どのような症状がでたのか。

 最初、マラリアのような兆候があった。高熱が出ただけで、ほかに症状はなかった。それでマラリアのテストをした。結果は陽性だった。マラリアの薬を飲み、4日間自宅で養生していた。だが、一向によくならなかった。医者のすすめで、エボラ出血熱のテストをした。結果は陽性だった。

 ――当時あなたの病状は重かった。意識はあったのか。

 意識があったり、なかったりだった。夫が言うには、私は体を起こして彼に話しかけたり、少し食べたりもした。そのことは、わずかな記憶があるだけだ。私はとても衰弱していた。

 ――あなたは治験薬「Zmapp」の投与を受けた。これまであなたを含めわずか6人にしか投与されていない未承認薬での治療に、葛藤はなかったのか。

 未承認薬だったので、当時私は、本当にこの薬を投与されたいのか自問した。そこで、エボラ熱に感染していた同僚のケント・ブラントリー医師に電話した。彼はこの未承認薬について研究していたからだ。「あなたはその薬を試すつもりなの」と聞いたら、「分からない」との答えだった。「あなたが試さないなら、わたしもそうするわ」と答えた。だがあとで、もし私がこれでよくなるなら、素晴らしいことだし、この薬以外に生き残れる方法はないのだから、生き残れないとしても、それもまたいいのではないかと思い直した。

 ――あなたは8月、米国アトランタのエモリー大学病院に特別医療機で移送された。当時のことを覚えているか。

 飛行機に乗るとき、夫にさよならを言った。私はものすごく衰弱していた。だが、飛行場で医師か看護師の誰かが、私を温かく励ましてくれたのを覚えている。機内では非常にのどが渇いて、脱水状態だった。飛行機が着いたときのかすかな記憶があるだけだ。

 ――あなたはそこで実際、回復し始めた―。

 医師が来て、「ナンシー、あなたは峠を越えた。生き残れるだろう!」と言った言葉をはっきり覚えている。エボラ熱のテストで、一部陰性だったと医師は言ったのだ。生き残れたという喜びが込み上げてきた。孫を抱ける、夫や子供たちにも再び会える! Zmappのおかげであると同時に、手厚いケアや輸血など、すべてに感謝した。

 ――あなたが日常生活に戻ったとき、人々の反応はどうだったのか。

 一部の人たちは、私に近づきたがらなかった。最初、私は面食らった。だが、そのことが2度目に起きたとき、リベリア人たちに思いをはせた。彼らは私と同様の仕打ちをうけているからだ。特に医療関係者は、家族から「家に帰ってくるな。どこかで過ごしてほしい」と言われている。死者の埋葬にあたるチームも同様だ。家族はエボラ熱をものすごく恐れているからだ。

 ――エボラ熱の回復者として、あなたはすでに免疫をもっている。リベリアに帰って、再び援助活動に携わるつもりはないのか。

 医師たちは、私がリベリアに帰るなら、防護服を身につける必要があると言った。この免疫がいつまで続くか分からないし、免疫がどれほど強いものかも定かでないからだ。

    

 現在、「ZMapp」とともに富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業が開発したエボラ出血熱治験薬「アビガン」が投与され患者が回復したケースが出ており、注目されている。

(ベイラ<モザンビーク>宝山晶子)