続く海面の上昇
台風21号の影響は甚大
今後、被害増大の恐れ
昨年9月初旬、関西地方などを襲い、最大瞬間風速58・1㍍を記録した、今世紀最強とされる台風21号。大阪の都市部にも大きな被害をもたらした。関西国際空港では大規模な高潮が発生し、海水が逆流、一面が海水で覆われた。また空港と陸を結ぶ連絡橋に、漂流していた長さ89㍍のタンカーが衝突。橋の一部が大きく壊れ、通行止めになるなど、観光客の移動にも大きな支障をきたした。
地球温暖化による台風の強大化と海面上昇、海抜ゼロメートル地帯の拡大の影響によって、深刻な高潮被害発生が危惧されていたが、まさに台風21号の猛襲でその懸念が現実化した。また地震が発生し、陸域地盤が沈下した場合、より一層甚大な浸水被害が起こると予測される。大阪湾ゼロメートル地帯では常住人口は約64万人、昼間人口は約100万人とされる。
2013年に公表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書によると、21世紀の海面上昇は26~82㌢と見積もられている。大阪湾周辺ほか、海抜ゼロメートル地帯の存在する東京湾、伊勢湾の海岸堤防は2~3㍍以上の高潮(台風や低気圧による一時的な海面上昇)を想定して整備を進めているため、通常は水没する可能性は低いと考えられている。国土交通省は大規模水害の発生時には、高潮を防ぐ堤防とともに、市民の避難場所になる高台整備事業を進めることを計画している。
ただし現在でも、台風が通過すると海岸付近は高潮により浸水の危険にさらされるのが現実。温暖化で海水面が上昇した場合、自然の偶然的要素が重なり被害が増大する可能性は常にある。
台風の数も温暖化に伴い増加している。「水没」は免れるとしても、台風の通過が多くなれば、危険性は徐々に高まってくる。また海岸堤防が十分に整備されていない地域は比較的小さな海面上昇に対しても脆弱で、対策が急務だ。
東京の東部に位置する葛飾区や江東区、江戸川区、墨田区など荒川や江戸川の両岸地域、千葉県の東京湾岸付近では、海抜ゼロメートル以下の地域約120万平方㌔が広がっている。特に東京23区の約20%は同地帯となっている。
海抜ゼロメートル地帯に位置する江戸川区は、地球温暖化の海面上昇の影響を都内でも真っ先に受ける地域。現在、区を挙げて地球温暖化対策を進めるため、「エコタウンえどがわ推進計画」を策定し、事業者・区民・区が一体となって具体的な取り組みを行っている。