災害ボランティア 寄り添い自身の心の成長に


《東日本大震災10年 未来に繋げる希望(5)》

 東日本大震災では多くのボランティアが活躍し、被災地の人々の生活や心に希望を与えた。青年ボランティア隊「UPeace」(東京都渋谷区)は、大震災を契機に発足した団体だ。災害に苦しむ人々の助けになろうと、ボランティアに関心のある若者が集まり、2011年3月23日、第1陣が東北の被災地支援に出発した。

被災地で活動中の加藤善斐徒さん=2012年1月(UPace提供)

被災地で活動中の加藤善斐徒さん=2012年1月(UPace提供)

 「愛は与えて忘れなさい」をモットーに掲げて過去10年間、東北への支援を続けてきた。それ以外にも18年の西日本豪雨災害など、国内で大きな災害が起きるたびにメンバーを募集し、現地に派遣してきた。

 過去1年間は、新型コロナの影響で東京からの派遣は見送っているが、今年3月現在、派遣人数は延べ3800人、作業した場所は延べ1400カ所を超える。

 被災地での活動の多くは、津波被害を受けた家のがれき掃除や小さな瓦礫の撤去などで、引っ越し作業の手伝いもしていた。

 宮城県石巻市で酒屋を営む女性はUPeaceのメンバーに掃除してもらったことについて「朝早くから店に来て、汗を流しながら作業しても嫌な顔一つせず、作業中に顔が汚れちゃっても、夕方になると笑顔を残して帰って行きました」と振り返る。

 メンバーの姿に刺激を受けて、店の再開も決めたという。

 最近は活動内容も地域のニーズに合わせて変化している。キャプテンを務める加藤善斐徒さん(36)は「例えば、大きな瓦礫は行政主導で整理されたが、公園の砂場に行くと下からガラスの破片が出てくることがある。これでは子供たちが危ない。地域のボランティアの立ち上げたプロジェクトに参加し、砂場の砂の入れ替えを手伝ったこともある」と説明する。

 また、ボランティアに参加した若者は「自分に何ができるのか真剣に考え、力を合わせて進んでいけば、復興はより早くなると学んだ」「有事に人助けをするためには、平時から人助けする習慣を身に付けることが大切」「誰かのために働いてみると、体は疲れても心は元気になれるのだと気付いた」と感想を述べる。被災地での活動は、助け合いの習慣を地元へ持ち帰ったり、自身の価値観を見直すきっかけにもなっているという。

 家族や友人、家を失った被災地の人々もまた、災害のことを次世代やほかの地域の人たちに伝えたいという思いを抱いている。「災害が起きても、自分たちと同じ失敗や悲劇を繰り返してほしくないと強く感じている。具体的に何をするかは、人によって異なるが、それを一つ一つ全て伝えることが大切だ」と加藤さんは語る。

 一方で、現地で、マスコミが正しい情報を伝えてくれないという不満の声を耳にすることもあった。ある被災者は、テレビや新聞の取材記者に「つらいが前を向いて頑張っている」と答えたら、「まだ支援が必要だ。現地に寄付してほしい」と編集されたという。

 だが、メディアと違い、ボランティアは「現地の人たちが大切にしていることを大切にし、語ることをそのままに受け取ろうとする」と加藤さん。災害ボランティアに参加した若者たちは被災者の心に寄り添うことを体験したことで、自らの心の成長を実感している。

(東日本大震災10年取材班)