ロシア占領下のウクライナ南部で強まる弾圧
「先が見えない」、抗議集会で市民が拘束、食料難にも拍車
ロシアのウクライナ侵攻から1カ月が経過した。ロシア軍の占領下にある南部の都市では、抗議集会に参加していた市民が拘束されるなど言論弾圧が強まり、食糧難にも拍車が掛かる。市民の一人は「先が見えない」と不安を表して以来、通信が10日余り途絶えたままになっている。
占領下の南部メリトポリに住むアレシャさん(38)はメッセンジャーアプリでの取材に、「抗議集会が強制解散させられた」と明かした。市長がロシア側に拘束された際にも集会が開かれ、市長を帰すよう迫ったが、今月15日を境に参加者の拘束が始まったという。「もう街頭集会は危険。今はオンラインで続けている」と窮状を訴えた。
アレシャさんは、南部ヘルソン州でロシア側による人民共和国の設立がうわさされているとし、「ウクライナを占領する意図はないと言っていたが、うそ。何もかも変わってしまう」とプーチン・ロシア大統領を批判した。
「不穏だ。この先どうなるか分からない」とメッセージを寄せたのは、その中心都市ヘルソンに住むユーリーさん(27)。「きょうは水を買うため1時間並んだ」「タマネギ、ニンジン、ジャガイモを買いに3時間並んで凍えたけど、駄目だった。帰り道に買えたのはリンゴだけ」「知り合いの女性はトラックに積まれたジャガイモを見たけど、全て腐りかけていた」。やりとりは10日から断続的に続いた。
夜間は爆発音が響き渡り、時に昼間も聞こえるという。ロシア側の放送が流れる中、外出を控える日々に、「僕は『真空状態』で生活しているようなもの。何が起きているのか」と記した。
12日には「何者かが市中心部の市場に放火した」「今や衣服や靴などどこで買えるのか分からない。医薬品は少ない」と伝えてきた。通信妨害が頻発しているといい、この日を最後に連絡は途絶えた。
首都キエフでは激しい攻防戦が続く。アンドレイさん(36)は「言いたいのは、僕らが戦争を始めたのではないし、ロシアを攻撃してもいないということだ」と強調する。「ここでは子供、女性も命を落としている。僕らは家を守ろうとしている。自分の命を賭してでも」とした上で、「日本の皆さん、さまざまな支援をありがとう」ともつづった。