家財が散乱、落ちた瓦、嘆息…でも「負けない」


震度6強の福島・宮城、住民らが黙々と後片付けを開始

陸上自衛隊による給水を待つ行列=17日午後、福島県南相馬市

 福島県沖を震源とする最大震度6強の地震から一夜明けた17日、身一つで避難した福島県と宮城県の住民らは、家財が散乱する変わり果てたわが家の様子に嘆息した。それでも「地震に負けない」との声も聞かれ、黙々と後片付けを始めた。

 福島県相馬市の避難所で一夜を過ごした女性(81)は「家はガタガタ。停電でこたつも使えなくて寒いし、食べる物もない」とつぶやいた。

 自宅1階で理容室を営む渡部哲さん(77)は倒れた鏡や鉢植え、割れた金魚鉢、増築部分に入った大きな亀裂を目の当たりにし、「どうしたらいいんだろう」と途方に暮れた。妻の幸子さん(74)は「(震度6強を観測した)1年前も、(東日本大震災の)11年前も片付けて捨てたのに」と悔しそう。しかし「地震に負けない。お客さんがいるから」と話し、2人で黙々と作業を続けた。

 同県南相馬市の給水所を訪れたパート従業員の女性(62)は断水の中、朝まで散乱した食器類などの整理に追われた。「食べる暇もなかった。水があればやっとご飯が炊ける」。ただ、崩れ落ちた屋根瓦は手付かずで、「あすは雨の予報なので早くシートを掛けないと」と不安そうに話した。

 宮城県登米市で長沼盛雄さん(73)が営むギフトショップでは、割れた皿や陶器は約500個に上った。コロナ禍で客足が遠のき、売り上げが減ったさなかで、長沼さんは「大震災より被害は大きい。ダブルパンチでつらい」と悲痛な声を上げた。

 近くでペットショップを営む佐藤紀夫さんは「寝室でたんすが布団の上に倒れた。寝ていたらと思うと」と胸をなで下ろした。店では大きな水槽を特注の台で固定していたが、床に散乱していた。佐藤さんは「震災対策を上回る揺れだった」と振り返った。