福島第1原発周辺の町村、人口減で存続の危機
自主財源確保は困難、行政サービス維持のため連携強化へ
東日本大震災に加え、史上最悪レベルの原子力事故が起きた東京電力福島第1原発の周辺町村は、避難の長期化で人口減少が著しい。自主財源の確保が難しく、行政サービス維持のため連携強化を模索している。
福島県双葉町は、復興事業などの影響で予算規模は増えた一方、町が使途を決められる住民税などの税収は減少したままだ。同県浪江町の税収は2010年度の約19億円から、震災翌年度の11年度は約4億円まで落ち込み、20年度も約9億8000万円にとどまる。
全町避難が続く双葉町の伊沢史朗町長は「帰還が始まっても、住民が戻らなければ交付金が入って来ない。町政運営が立ち行かなくなり、合併の議論が出てくる可能性もある」と嘆く。
原発避難者は、特例法で住民票を避難先に移す必要がない。同県富岡町の3月1日時点の居住人口は約1800人だが、住民登録人口は約1万2000人に上る。しかし、町の担当者は「特例がなくなれば、働く世代や子どものいる世帯は一気に流出してしまう可能性もある」と危機感を募らせる。
浪江町の担当者は「財政的にはうちが一番厳しい」と訴える。原発が立地する双葉、大熊、富岡、楢葉各町は、関連交付金のほか固定資産税が税収を支えていた。しかし、「浪江など周辺自治体は(原発作業員らが相手の)商業の町で、人口減のダメージは大きい」と明かす。
双葉町では、6月以降に避難指示が解除される予定で、これにより避難指示が出された全ての町村で居住が再開される見通し。各町村は居住人口を増やそうと、産業団地の建設やインフラ整備などを通じ企業誘致や帰還を促す。
21年7月には、県が沿岸部への移住促進を後押しするため、富岡町に「ふくしま12市町村移住支援センター」を設置。町村の窓口と連携して移住相談を受け付けるほか、地域の人と交流しながら移住を体験するプログラムも実施し、首都圏などから人材の呼び込みを目指す。
富岡町の山本育男町長は、総合病院を整備し、共同利用するなどの事例を挙げ、「互いに無駄を省き、連携を密に町村の運営をしていきたい」と話している。