キエフ在住の邦人女性、安全地帯は「もうない」
車で17時間かけ隣国へ退避、「長期的に支援や関心寄せて」
侵攻を続けるロシア軍の無差別的な爆撃で、ウクライナでは民間人の命が危険にさらされており、国外へ逃れた避難民は150万人を超えた。「安全な場所はもうない」。首都キエフから17時間かけて隣国モルドバに退避した国連職員の日本人女性(32)が現地時間6日午後(日本時間7日未明)、電話取材に応じ、当時の様子を語った。
キエフ市中心部に住む女性は、ロシア軍の侵攻2日目の2月25日、郊外のホテルに避難した。夜間は外出禁止令が出され、深夜に空襲警報で目を覚ましシェルターに駆け込む日々。「爆撃が頭の片隅にある中で過ごすのは精神的にきつかった」と語る。物流は滞り、スーパーではトイレットペーパーなど衛生用品が品切れになった。
退避のめどが立った今月1日午前7時ごろ、女性を含む国連機関のスタッフら約60人は車に乗り込み、南西約500キロのモルドバを目指し出発。冬のキエフは一層冷え込み、雪が舞っていた。通行止めの道路があり、たびたびルートを変えながら安全な道を進んだ。国境にたどり着いたのは午前0時近く。出国審査の窓口は長蛇の列で、雪の降る中、車を捨てて歩いて国境を越える人もいたという。
国境までのルートは2日に爆撃を受けた場所も。女性は「どこにロシア軍がいるか分からない。安全な所はもうないのかもしれない」と感じた。相当数の難民がモルドバに渡り、宿泊施設は埋まっていた。
女性は3日、セルビアの首都ベオグラードに移動。「ようやく心が落ち着いた」と振り返り、国連の業務を続けている。
この10日余りの爆撃でウクライナ国内の町並みは様変わりした。日本で寄付の動きが広がっている状況に触れ、「数年では復興できないものを戦争で失った。長期的に支援や関心を寄せてほしい」と願った。