タイヤナットのさび注意、大型車の脱落事故多発


国交省が呼び掛け、オイルを塗り、正しく締め込みを

タイヤナットのさび注意、大型車の脱落事故多発

タイヤ脱落事故を起こした車両のさびたワッシャー付きナット(右)。左はさびがないナット=2月22日、東京都千代田区

タイヤナットのさび注意、大型車の脱落事故多発

時速60㌔で走行中のトラックからタイヤが外れ、後ろから人形に直撃したとの実験動画のワンシーン(国土交通省が作成した動画より)

 トラックなどの大型車からタイヤが脱落する事故が多発している。国土交通省によると、2020年度には過去最多の131件を数え、21年度も1月までに107件起きた。タイヤを固定するナットのさびが原因とみられ、国交省はオイルを塗るなど適切な整備を呼び掛けている。

 同省が、総重量8トン以上のトラックや乗車定員30人以上のバスなどを対象に集計した。事故件数は11年度の11件を底に増えており、人身事故は11~20年度で計20件あった。

 国交省の実験によると、時速60キロで走行中のトラックから重さ約90キロのタイヤが脱落し人形に衝突した場合、人形は約4メートル飛ばされた。実際に起きれば命に関わる事態になるという。

 ホイールはボルトと、ドーナツ状の「ワッシャー」が付いたナットで挟んで固定する。国交省は21年秋以降に脱落事故を起こした大型車で、ワッシャー付きナットにさびや汚れがある事例を複数把握。さびでナットが滑らかに回転しないため締まり切らず、脱落につながるという。

 日本自動車工業会が行った実験では、ワッシャーとナットの間に泥水を入れて締め付けを繰り返すと固定する力が弱まり、さらに腐食すると当初の半分程度になるが、清掃してオイルを塗ると固定力が復活した。

 ワッシャー付きナットは、10年に国際規格が適用されて以降、使われるようになった。自工会の調べでは、国内・国際両規格とも、走行距離が500キロを超えても正しく締められていれば走行に問題はないという。

 国交省の担当者は「適切な整備で事故は防げる。タイヤを交換する際にナットを清掃してオイルを塗ってほしい」と話す。同省は、業界関係者や学識経験者らによる検討会でさらに調査・分析を進め、22年秋ごろ対策をまとめる方針。