難しい構成に挑める靴、宇野昌磨選手を支える
研磨職人の橋口さん、軟らかさを追求、最高の演技に期待
フィギュアスケート男子の宇野昌磨選手(24)=トヨタ自動車=が8日のショートプログラム(SP)で3位につけた。銀メダルの平昌五輪に続く表彰台を目指し、10日のフリーでは4回転ジャンプを4種類5本組み込む考え。「僕がやってきた中で一番難しい」という構成に今季挑み続けてこられた要因は、スケート靴だという。研磨職人の橋口清彦さん(49)が足元から支えている。
ワゴン車の後部座席を工房に改造し、依頼に応じて地元の愛知県外へも出張。車内でスケーターの靴やブレード(刃)を調整する。宇野選手に「靴を見てもらえませんか」と依頼され、2019年春ごろから担当する。
足首の柔軟性を生かせる軟らかい靴を履いてきたが、硬い靴より交換時期が早いのが難点で「3週間ごとに替えていた」。新しい靴は慣らすのに時間を要し、満足に練習できる期間が短かった。
4回転時代のトレンドは反発力のある硬い靴。昨季終了後に試したが、やはり合わなかった。橋口さんは「逆方向に進んでみよう」と提案。「これ以上は駄目というラインを越えた」というくらい軟らかくすることで、柔軟な足首の特長をより引き出せる靴になった。
「普通に見れば壊れている」というほどの状態のため、そもそも交換時期を気にしなくなった。ブレードは曲がらないことで知られる山一ハガネ(名古屋市)製にして、靴の違和感に悩まされることは減った。
橋口さんは「スケート靴づくりに2、3カ月向き合って、ようやく答えが見つかった」と喜ぶ。フリーの曲は「ボレロ」。「練習で見ているが、ノーミスのボレロは鳥肌が立つくらいすごい。あれを何とかみんなに見せてほしい」。壮大な曲調に乗った最高の演技を心待ちにしている。(時事)