東大など開発、微量元素でアサリ産地を識別


産地偽装見破る新手法、アサリ以外の魚介類にも適用可能

東大など開発、微量元素でアサリ産地を識別

ネオジム同位体比による産地識別法で分析されるアサリの貝殻(東京大大気海洋研究所田中健太郎特任研究員提供)


 
 東京大大気海洋研究所と弘前大などの研究チームは2日までに、アサリの貝殻にわずかに含まれる元素ネオジムの同位体(同じ元素で中性子の数が異なるもの)の比率から、産地を識別する手法を開発したと発表した。アサリ以外の魚介類にも適用可能といい、産地偽装の発見や防止に役立つと期待される。

 アサリをめぐっては、熊本産として販売されている商品の97%は外国産の可能性が高いことが農林水産省の調査で判明。原産地表示への信頼が揺らぐ事態となっている。

 ネオジムは強力な磁石の素材にも使われるレアアース(希土類)の一種。古い地質ほど同位体ネオジム143の比率(同位体比)が少ないことが知られている。

 同研究所の田中健太郎特任研究員らは、河川などから土や砂が流れ込むため、海水のネオジム同位体比も場所によって異なることに着目。成長過程で海水から取り込み、貝殻に蓄積されたネオジムの同位体比を国内12カ所、中国4カ所のアサリで調べた。

 その結果、日本より地質年代が古い中国産は、いずれもネオジム143の比率が少なく、国内産と見分けられた。国内産同士でも、比較的新しい地質の北海道や関東地方と、より古い東海、四国産などとが識別できた。

 また、国内のスーパーで「福岡産」「熊本産」「中国産」と表示されたアサリを購入して調査。福岡産、中国産は周辺地質と矛盾しなかったが、熊本産は同位体比が低く、産地偽装か海外産混入の可能性があるという。

 農水省によると、アサリの国内生産量は1983年の約16万トンをピークに、2019年は約8000トンと激減。昨年12月には、熊本県内の加工業者が中国産などの約630トンを同県産と偽り、是正指示を受けた。偽装発覚を受け、県はアサリの出荷停止を漁協などに要請している。

 ネオジムは貝殻以外にも蓄積するため、魚や海藻にも使えるという。田中さんは「産地偽装だけでなく、先史時代の貝殻の装飾品を調べれば、当時の交流の地理的広がりを知ることもできるのでは」と話している。