上皇、上皇后両陛下の和歌で作曲、被災地で披露
千原さん作曲「勇気と希望、愛と祈りを」、神戸と仙台で
上皇、上皇后両陛下が東日本大震災や阪神大震災を詠まれた和歌による合唱曲「荘厳のコラール、愛(かな)しみのアリア」が、二つの被災地で披露される。兵庫県西宮市在住の作曲家千原英喜さん(64)が「勇気と希望、愛と祈りとなれ」との思いを込めて作った。兵庫県合唱連盟が神戸市で開くコンサートで23日に歌われる。来月27日には仙台市でもコンサートが開かれる。
同連盟は阪神大震災から25年を前に2019年夏、上皇后陛下が05年1月に神戸を訪れて詠まれた「笑み交(か)はしやがて涙のわきいづる復興なりし街を行きつつ」を合唱曲にしたいと宮内庁に相談。上皇陛下が東日本大震災の翌月に被災地を視察して詠まれた「大いなるまがのいたみに耐へて生くる人の言葉に心打たるる」と一緒に作られることになった。
作曲した千原さんは「光栄だが、これまでにないプレッシャーを感じた」と述懐する。19年10月半ばに依頼を受けてから、1カ月以上作業は進まなかったが、両陛下の和歌を繰り返し音読し、上皇陛下の東日本大震災後のビデオメッセージを見返した上、両陛下が神戸で訪れられた場所に足を運ぶなどする中で「和歌と音を交差させることができた」という。
両陛下が被災地を見舞われている様子をイメージし、ピアノを両陛下、合唱を被災者に見立てて曲を作ったと説明する。「一小節ごとに涙しながらも、本格着手からは一気に進んだ」。19年末に合唱曲が完成し、20月1月に神戸で開かれた災害復興支援コンサートで初披露された。
和歌を合唱曲にしようとした発起人で、同連盟事務局長の浜田直勝さん(56)もコンサートに参加。「生きていることの喜びを感じて歌った」と振り返り、「災害はどこでも起きる。日本にとどまらず海外でも長く歌い継がれていってほしい」と語った。