芥川賞に砂川文次さんの「ブラックボックス」
直木賞は今村さん「塞王の楯」と米澤さん「黒牢城」
第166回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に砂川文次さん(31)の「ブラックボックス」(群像8月号)が選ばれた。直木賞は、今村翔吾さん(37)の「塞王(さいおう)の楯(たて)」(集英社)と米澤穂信さん(43)の「黒牢城(こくろうじょう)」(KADOKAWA)に決まった。
砂川さんは候補3回目で受賞。作品は、コロナ禍に自転車便のメッセンジャーとして働く28歳男性の物語。将来への不安と鬱憤(うっぷん)を抱えながら日々を過ごす主人公は、傷害事件を起こして刑務所に入ることで自分の内面と向き合う。
選考委員の奥泉光さんは「格差社会の底辺の方で生きる人物を描いた現代のプロレタリアート文学。古風なリアリズムを前提に、書かれるべき切実さが小説ににじみ出てくるような力感があった」と評価した。
今村さんも候補3回目で受賞。作品では、戦国時代に城の石垣を造った職人集団に焦点を当てた。幼時に落城で家族を失った石工の匡介は「絶対に破られない石垣」で人を守りたいと願う。
米澤さんも同じく候補3回目。戦国期の武将、荒木村重が織田信長を相手に繰り広げた籠城戦を題材にしたミステリー。城内で相次ぐ怪事件に村重は、幽閉中の軍師、黒田官兵衛に示唆を求める。
選考委員の浅田次郎さんは、今村さんの「独創的なテーマと力強さ」、米澤さんの「籠城戦を背景にしたミステリーの上質さ」が評価されたと話した。
贈呈式は2月下旬に東京都内で行われ、正賞の時計と副賞100万円が贈られる。