笹子トンネル事故9年、「悔しさ増すばかり」
遺族らが黙とう、「なぜ命が奪われたか」真相究明訴える
中央自動車道笹子トンネル(山梨県)で天井板が崩落し男女9人が死亡した事故は2日、発生から9年を迎えた。同県大月市のトンネル近くでは、発生時刻の午前8時3分に合わせて遺族らが黙とうをささげ、献花した。遺族は「9年たっても悔しさは消えない。ますます増すばかりだ」と心情を吐露した。
中央道下り線初狩パーキングエリア(PA)では、トンネルを管理する中日本高速道路(名古屋市)主催の追悼慰霊式が開催され、遺族や同社幹部、国土交通省関係者ら20人余りが参列。同社の宮池克人社長は「安全を最優先とする意識と行動を改めて徹底し、高速道路の安全性向上にグループ挙げて全力で取り組む」と語った。
犠牲となった石川友梨さん=当時(28)=の父信一さん(72)は式の後、「幸せだった一瞬の写真(娘の遺影)を見ても、この人生を奪った中日本(高速)の責任は重い」と指摘。「子供たちの命がなぜ奪われてしまったか理由が知りたい。そうしない限り遺族は死ぬまで心を満たすことができない」と話し、同社に真相究明を訴えた。
事故後、同社関係者10人が業務上過失致死傷容疑で書類送検されるなどし、甲府地検は2018年に不起訴を決定。うち2人について、甲府検察審査会が不起訴不当と議決したが、地検は20年4月に不起訴とし、捜査は終結した。
同社は今年3月、社員向けの研修施設として八王子支社(東京都八王子市)の敷地内に「安全啓発館」を設置し、下敷きとなった車体などを展示。事故の風化を防ぐとともに、社員の安全意識向上に努めている。