原爆ドーム背に能舞台、「爆心地鎮魂薪能」
「高砂」と「羽衣」を舞う、失われた歴史や文化を後世に
広島市中区の原爆ドームで15日夜、原爆の犠牲者を悼んで「爆心地鎮魂薪能」が行われた。原爆ドームを背に特設の能舞台が造られ、かがり火の明かりに照らされながら、喜多流の能楽師が「高砂」と「羽衣」の能を舞った。
被爆前、原爆ドーム付近は「猿楽町」や「細工町」と呼ばれ、能楽ゆかりの文化が根付いていたという。近くに自宅があったかつての住民らが、原爆によって失われた歴史や文化を後世に伝えようと薪能を企画した。
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、無観客で実施されたものの、動画投稿サイト「ユーチューブ」を通じて世界中に配信された。実行委員会のメンバーで映像作家の田辺雅章さん(83)は「優れた伝統文化が原爆のために消え去ったということを知ってほしい。再びあの日を繰り返さないということが世界の人々に分かっていただけるのではないか」と話した。