ぶれなかった名古屋、ルヴァン杯初制覇
堅守速攻の「原点」、屈辱のJ2降格から悲願の頂点
今や名古屋の代名詞となった「堅守速攻」。その原点には、5年前の屈辱がある。
Jリーグ創設時から参加する「オリジナル10」の一つでもあるクラブは、2016年に年間16位となり、初めてJ2降格を味わった。名古屋OBで同年6月から強化責任者を務める大森征之スポーツダイレクター(44)は「試合を見てもエネルギーが感じられなかった。降格するのも分かる」と当時の低迷ぶりを振り返る。
どうすれば勝てるのか-。現役時代から名門の鹿島などとの差を考えていた大森氏には、理想があった。「ゴールを奪い、守る。そのために攻守一体となったスピード感のあるサッカー。ハードワークして最後まで戦う姿を見せられる集まりにしたい」。今にもつながる強化の軸が定まった。
ゼロからチームづくりを始め、16年オフは主力の闘莉王ら15人以上がチームを去った。風間八宏新監督の下、1年でJ1復帰。しかし、その後も下位に沈む。「(風間監督には)今と変わらない注文をしていたが、表現できなかった」。19年9月、戦術家で知られるフィッカデンティ監督を招いた。
イタリア人指揮官になってからは着々と守備が整備。今季何度も見せたボールを奪ってからの速攻は、5年前に掲げた理想に近づきつつあることを示している。大森氏は「何とかここまで来られた。一冊の本ではまとまらないくらいのことがあったが、サッカーに対する考え方はぶれなかった」と感慨を込めた。