ヤクルト6年ぶりV、光った高津監督の観察眼
2年連続最下位から頂点に、選手や勝負どころ「監視」
2年連続最下位だったヤクルトを優勝へと押し上げた高津監督には、勝利への並々ならぬ決意に加えて冷静な目があった。
昨オフは主力の慰留に成功。主軸の山田、救援の石山は国内フリーエージェント(FA)権を使わず、行使したエースの小川も残った。4番村上の後を任せる打者としてオスナ、サンタナを獲得。戦う態勢を整えた。
春季キャンプから気を配ったのは、選手のコンディション。「最下位のチームなので、たくさん課題がある」と話しながらも、最優先したのは離脱者を出さないこと。練習量を抑える日も珍しくなかったが、「緩過ぎるのかなと思ったりもしたけど、気をつかってきてよかった」。長いペナントレースを全員で戦い抜き、言葉に実感を込めた。
疲労に配慮し、先発投手はシーズン終盤まで中6日の登板間隔を守った。2年目の奥川には主に10日を与えた。救援は3連投までが基本。「監視する目を持って、グラウンドにしっかり立たせることは僕の大きな仕事」との信念からだった。
勝負どころの9月以降には、機を見て柔軟な対応も見せた。先発が中5日で登板し、プロ野球新の50ホールドをマークした清水や抑えのマクガフは4連投もあった。救援に厚みを持たせるために田口、スアレスを配置転換した。
長期離脱がなく打線も固定できた。塩見、青木の1、2番で勢いをつけ、山田、村上の3、4番は頼もしい存在。オスナ、サンタナも機能した。捕手の中村は攻守で貢献し、遊撃は西浦と元山の併用。川端は代打での勝負強さを発揮した。控え選手には事前に役割を明確に伝え、十分な準備ができるようにした。
3・5ゲーム差の3位で迎えた9月7日の首位阪神戦前。選手を甲子園の室内練習場に集め、「絶対大丈夫」と何度も語り掛けた。自分を信じ、仲間を信じれば結果はついてくると熱く伝えた。「迷いなく自分のパフォーマンスを発揮できるようにするのも僕の役目。背中を押してあげることができればと思った」
選手と距離が近い高津監督が、つくり出した明るい雰囲気はチームの推進力になった。激励も勝負どころを捉えた絶妙なタイミングで、優勝へぐんぐんと加速させた。