病院建設めぐる背任で日大理事ら2人を逮捕
東京地検特捜部がトップ自宅を再び捜索、資金の流れ解明へ
日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)の建設工事をめぐる事件で、日大の資金2億2000万円を流出させ損害を与えたとして、東京地検特捜部は7日、背任容疑で日大理事の井ノ口忠男容疑者(64)と大阪市の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳容疑者(61)を逮捕した。日本有数の私立大学をめぐる事件は、現役幹部の逮捕という事態に発展した。
特捜部は同日午後、関係先として日大トップの田中英寿理事長(74)の杉並区の自宅を家宅捜索。理事長宅は9月にも捜索を受けており、事件への関与の有無について調べを進めるもようだ。
関係者によると、井ノ口容疑者は逮捕前の任意の事情聴取に対し、「知らない」などと関与を否定していたという。
逮捕容疑は昨年2月中旬ごろ、板橋病院の建て替え工事の設計をめぐり、業者選定のためのプロポーザルで都内の設計会社が1位になるよう評価点を改ざん。この設計会社を選定させた上で、同社取締役に対し、着手金約7億3000万円のうち2億2000万円を籔本容疑者が全株式を所有するコンサルタント会社(港区)に送金するよう指示し、同8月上旬に実際に送金させて日大に損害を与えた疑い。
コンサル会社は実体のないペーパーカンパニーだった。業者選定などの業務は、日大が全額出資して設立し、物品の調達や施設の管理・運営を担う「日本大学事業部」(世田谷区)に委託され、井ノ口容疑者は同社の取締役を務めていた。
コンサル会社への送金後、井ノ口容疑者が錦秀会のグループ会社から、複数の会社を経由して数千万円を受け取った疑いもあり、特捜部は関連を調べている。
特捜部は今年9月、関係先として日大本部(千代田区)や日本大学事業部などを一斉に捜索。資金の流れの解明を進めていた。
日大は「誠に遺憾。捜査に引き続き全面的に協力していく」とのコメントを発表した。