神奈川大、ハイブリッドロケット打ち上げに成功


安全なロケットとして注目、高度10.7kmに達し日本記録

神奈川大、ハイブリッドロケット打ち上げに成功

打ち上げられた神奈川大のハイブリッドロケット=19日午前、秋田県能代市

 神奈川大航空宇宙構造研究室と同大宇宙ロケット部などは19日、秋田県能代市の海岸で、安全なロケットとして注目されているハイブリッドロケット打ち上げに成功した。位置情報の信号が途切れ、機体回収には至らなかったが、高度約10・7キロに達したとみられ、2013年に北海道大などが記録した国内記録(推測値8・3キロ)を更新した。

 ハイブリッドロケットは、既存の液体・固体燃料と違い可燃性が低い推進剤で飛ぶため、安価でトラブルが起きても爆発や環境汚染の恐れがほとんどない。同研究室は、おもちゃなどに使われるABS樹脂を、麻酔ガスに利用される亜酸化窒素で燃焼させる方式を考案した。

 ロケットは全長約4メートル、直径約15センチで重量約32キロの小型。14年に開発を始め、発射実験は新型コロナウイルス禍などで3年ぶり。高度6・2キロだった前回から、全長を1メートル伸ばすなど改良した。防衛大と五輪ボブスレーチームにソリを提供してきた、東京の町工場でつくる「下町ボブスレープロジェクト」が技術協力している。

 ハイブリッド式は、資金力がなくても製作可能な超小型衛星などと相性が良い。半面、燃焼効率が悪く推力が低いのが弱点だ。実用化に向け国内外で研究が進んでいる。

 超小型衛星は近年、一般企業や大学も参入しているが、大型衛星を積むロケットの相乗りになることが多く、投入軌道や発射時期に制約があった。希望に応じた発射が可能になれば、宇宙利用拡大が期待できる。

 同研究室は来年に高度30キロ、24年には宇宙空間の下限到達を目指している。開発を主導する高野敦教授は「信号が途絶した原因を究明し、大型化や飛行制御開発に取り組みたい」と話した。