競泳のエース・木村敬一、追い続けた輝きを手に


悲願の金「この日のため」、銀の富田と健闘をたたえ合う

競泳のエース・木村敬一、追い続けた輝きを手に

競泳男子100㍍バタフライ(視覚障害S11)決勝を終え、抱き合う金メダルの木村敬一(左)と銀メダルの富田宇宙=3日、東京アクアティクスセンター

競泳のエース・木村敬一、追い続けた輝きを手に

競泳男子100㍍バタフライ(視覚障害S11)で金メダルを獲得した木村敬一(左)とタッパーの寺西真人コーチ=3日、東京アクアティクスセンター

 競泳男子のエース、木村敬一(東京ガス)が追い続けた最高の輝きを4度目のパラリンピックで手に入れた。男子100メートルバタフライ(視覚障害S11)で自身初の金メダル。表彰式で君が代が流れると涙が止まらなくなった。「この日のために頑張ってきた。この日が来ないんじゃないかと思ったこともある」。悲願達成の喜びに震えた。

 優勝候補として臨んだ決勝。スタートからトップを譲らなかった。折り返してからもスピードは衰えず、追いすがる富田宇宙(日体大大学院)らを引き離す。しかし、木村には見えず、無我夢中だった。ゴール後は体力の消耗感から「駄目だったのかな」と一瞬不安がよぎった。寺西真人コーチからタイムと勝利を伝えられるとようやく表情を緩め、富田らと健闘をたたえ合った。

 2歳で視力を失った。10歳でパラ競泳の世界に入り、2008年北京大会に初出場してから前回大会までに計6個のメダルを獲得。しかし、金メダルだけが足りなかった。「メダルの数よりも金」。一時はライバル選手のつてで米国に拠点を移すなど、手段を選ばない強い気持ちで頂点を目指してきた。

 金メダルは木村にとって進むべき道しるべだった。メダルの感触を確かめ、「一緒に戦ってくれた人の思いがある。誰のメダルよりも重いのかな」。首に掛かる確かな重みが、何よりも勝利の証しとなる。