高跳びの鈴木徹選手、可能性示した孤高の戦い


義足のハイジャンパーが4位、6大会連続の入賞達成

高跳びの鈴木徹選手、可能性示した孤高の戦い

陸上男子走り高跳び(義足T64)決勝で跳躍する鈴木徹選手=3日、国立競技場

 東京パラリンピック陸上走り高跳びに出場した鈴木徹選手(41)=SMBC日興証券=は、まひなどの下肢障害を抱える選手が大半を占めるクラスで、数少ない義足のハイジャンパーとして、障害者の持つ可能性を示そうと試合に臨んだ。4位でメダルには届かなかったが、これで6大会連続の入賞を果たしたレジェンド。

 「力は出し切った。挑戦してきた意味はあった」と胸を張った。

 高校3年の時、交通事故で右脚を膝元から切断した。スポーツ用義足製作のパイオニアとして知られる義肢装具士の臼井二美男さんが、初めて受け持ったパラリンピアンでもある。付き合いは20年以上に及び、臼井さんは「失った部分が大きいハンディに負けず、練習を積んだ。今は縄跳びでも、まるで自分の足のようにこなす」と語る。

 2000年シドニー大会から入賞を続けるが、毎回メダルにはあと一歩。中でもリオデジャネイロ大会は、メダルを意識するあまり力を出し切れず、悔いだけが残った。

 東京大会は40代で迎えたが、リスクを恐れず一から跳び方を見直した。幅跳びと違い、高跳びは義足でない方の足で踏み切る。義足との体重移動を意識し、より負担の少ないスムーズな跳び方ができるようになった。

 チャレンジを続けるのは「僕が出ないと義足では高跳びはできないと思われる」という責任感からだ。鈴木選手の出場クラスは、まひなどの障害がある選手が記録の上位を占める。過去に義足で2メートルを跳んだのは2人で、現役は鈴木選手だけ。

 国内では長く義足の高跳び選手は出ていないといい、「メダルで後に続く人を」が目標だった。

 鈴木選手が目指すのは「障害者が自分なりに輝く道筋を示すこと」。本番も義足は1人だったが、障害者が新たな分野に挑戦する勇気につながると信じて跳躍した。「パラは自分を表現することに価値がある」。満足げな笑みで語った。