鈴木孝幸、冷静な判断光り狙い通りの金メダル
世界記録保持者が予選失格、作戦を切り替え2位を圧倒
トップを確認し、ガッツポーズした鈴木孝幸(ゴールドウイン)は、誇らしそうだった。競泳男子100メートル自由形(運動機能障害S4)で今大会日本勢初となる金メダル。自身にとっても3大会ぶりの輝きに、「単純な言葉になってしまうけど、とてもうれしい」。理論的に泳ぎを追求してきた34歳から率直な感想がこぼれた。
5度目のパラリンピック。生まれつきの障害により左手は指が3本で、右腕は肘から先がない。両脚も欠損しているが、複数の泳法でメダルを獲得してきた。2013年には英国へ拠点を移し、自分の泳ぎを磨くとともに現地の大学でも勉学に努めてきた。
決勝は持ち前の冷静な判断力が生きた。世界記録保持者のイスラエル選手が予選で失格。自分の実力を出し切れば、金メダルに手が届く状況になっていた。前半からスピードを出していくプランも考えていたが、「力まずにスピードを上げていく感じにできれば」と後半も力を残す作戦に切り替えた。
前半は隣のコースのイタリア選手にリードされ、折り返しのターンでは少し差が開いたが、慌てずに自身の息継ぎの方向にいる相手の位置を確認。逆転は可能とみて「テンポを崩さないことを心掛けた。自分の中では粘る感じ。向こうが落ちてくれた」。自己ベストにはわずかに及ばなかったが、後半のタイムは2位より2秒以上も速かった。
レース終了後のガッツポーズについて、鈴木は「自然に出ました。やり過ぎました。反省しています」と振り返って笑わせた。競技2日目で早くも2個目のメダル。残り三つの個人種目に向け、「ベストを尽くせる準備をしたい」と力強かった。