デルタ株の猛威、インフラにも影響じわり


交通、保育、ごみ回収… 社会機能全体への弊害が深刻に

デルタ株の猛威、インフラにも影響じわり

東京都内のある区の公式サイトには、園内で新型コロナウイルスの感染者が出たため休園となった保育施設を知らせる発表文がずらりと並んでいる(ウェブサイトより)

 新型コロナウイルスの急激な感染拡大は、医療体制だけでなく、交通や保育、ごみ回収といった生活に欠かせないインフラやサービスにも影響を及ぼし始めた。保育施設が休園に追い込まれ、保護者が出勤できなくなるケースも相次ぐ。感染力の強いデルタ株の流行がこのまま続けば、社会機能全体への深刻な弊害が懸念される。

 厚生労働省によると、園内で感染者が出たため全面休園している認可保育所や認定こども園などは、19日時点で10都道府県165カ所に上る。これまでに感染者が確認された園は延べ4229カ所。保育施設だけでなく、障害児の通所施設などでもクラスター(感染者集団)の発生が相次いでいる。

 首都圏のある認可保育所は今月、園児や職員に複数の感染者が出たため2週間の休園を余儀なくされた。初の園内感染がクラスターとなり、女性園長は「デルタ株の感染力の強さを感じた。社会機能の崩壊が少しずつ始まっているのでは」と危機感を募らせる。休園は医療従事者を含む保護者らの仕事にもドミノ式に影響を及ぼすため、園長は「二度と休園にはできない。職員は残業しておもちゃの消毒などを徹底している」と語った。

 石川県内を走るJR七尾線は、運転士13人が感染するクラスターが発生したため、列車本数を減らして運行している。東京都台東区は清掃事務所での複数職員の感染により、8月末まで不燃ごみの回収を中止。食材宅配サービス「おうちコープ」では、青果商品の仕分けセンターで複数の従業員が感染し、9月上旬まで果物や野菜などの配送ができなくなった。

 社会機能もむしばみはじめたデルタ株の猛威。国立感染症研究所の脇田隆字所長は「現在のペースで感染拡大が続けば、医療が制限されるだけでなく、当然インフラや交通、物流などにも影響が出てくることが考えられる」と指摘。「そうした状況をわがこととして共有してもらうことが最も必要だ」と強調し、改めて外出自粛などを徹底するよう呼び掛けた。