妊婦らコロナに募る不安「本当に入院できるの」


感染妊婦の対応が急務、周産期搬送の体制強化が必要

妊婦らコロナに募る不安「本当に入院できるの」

妊婦の女性が、かかりつけの産婦人科でコロナについて相談した場面を描いた漫画(@mgmg_urikoさん提供)

 新型コロナウイルスのまん延で、妊婦らが「感染したら入院先は見つかるのか」と不安を募らせている。妊娠後期(28週以上)は重症化しやすいとされ、母体治療のため帝王切開することも多い。患者の入院調整が各地で難航する中、自治体には緊急対応が必要な感染妊婦の受け入れ体制整備が求められている。

 千葉県柏市では、感染した妊婦の入院先が見つからずに自宅で早産。新生児が死亡し、国や自治体が早期に入院できる仕組みづくりに乗り出した。

 妊娠30週の女性会社員(31)=東京都品川区=は「ニュースを見て不安になった」と話す。

 早産となれば新生児集中治療室(NICU)での処置が必要になるが、かかりつけの病院には設備がない。医師からは、感染して急きょ出産する場合、転院先を手配すると説明を受けたという。「本当に転院先が見つかるのか。とにかく外出を控えて感染を防ぎ、無事に生まれてほしい」と願う。

 「ここでは産めません」。感染時の対応について、関東地方の臨月の主婦(33)は通院先からこう告げられた。感染するまでは受け入れ先が分からないため、「漠然とした不安を感じた」と語る。体験を描いた漫画をツイッターに投稿すると、1万3000回以上リツイート(拡散)された。

 日本産婦人科医会によると、都内で7月に感染が判明した妊婦は98人と前月比3・4倍で過去最多。感染急拡大に伴う増加とみられる。

 国は各都道府県に、感染妊婦の対応ができる医療体制の整備を求めているが、特に地方ではNICUなど高度な周産期医療と感染症対応が可能な医療機関は限られる。

 同会常務理事で日本医科大多摩永山病院の中井章人院長は「感染妊婦の数をリアルタイムに把握できていない自治体は多い。重症化リスクの高い患者が適切に入院できるよう、一般搬送と周産期搬送の連携機能の強化は必須だ」と訴えている。