人間国宝の能楽師、野村幻雪さんが死去、84歳


多発性血管炎性肉芽腫症のため、観世流シテ方として活躍

人間国宝の能楽師、野村幻雪さんが死去、84歳

野村幻雪さん(文化庁提供)

 観世流シテ方の能楽師で、人間国宝の野村幻雪(のむら・げんせつ、本名野村四郎=のむら・しろう)さんが21日午前11時6分、多発性血管炎性肉芽(にくげ)腫症のため東京都内の病院で死去した。84歳だった。葬儀は近親者で営み、後日お別れの会を開く予定。喪主は長男で観世流シテ方の昌司(まさし)さん。

 和泉流狂言方の六世野村万蔵の四男として東京に生まれる。3歳で狂言の初舞台を踏むが、後に能の道を志し、1952年に二十五世観世元正(後の左近)に入門。観世寿夫の教えも受けた。

 62年に独立。端正で優美な芸風で観世流シテ方として活躍した。特に「関寺小町(せきでらこまち)」「檜垣(ひがき)」「姨捨(おばすて)」などの老女物をはじめとする古典のほか、新作能や他ジャンルとの共演にも意欲的に取り組んだ。欧米やインドなど海外でも公演。能楽界をリードし、2016年に人間国宝に認定された。

 日本能楽会会長も務め、98年に紫綬褒章、18年に旭日(きょくじつ)小綬章。その功績から今年4月、観世宗家に雪号の称号を許され、「幻雪」を名乗っていた。

 共に人間国宝の狂言師である野村萬さんと万作さんは兄。