アフガン女子選手「東京パラに参加したい」
タリバン支配で出発できず、動画を作成し救済を訴える
東京パラリンピックのアフガニスタン選手団(男女2人)が、イスラム主義組織タリバンの制圧を受け、首都カブールを出発できなくなった。国際パラリンピック委員会(IPC)は「残念ながら参加できない」と厳しい見通しを示すが、女子選手は参加に向け、救済を訴えている。
「まだ希望を失っていない」。自国パラリンピック委員会関係者にこう伝えたのは、ザキア・クダダディ選手。今回初めて採用されたテコンドーの女子選手だ。
アフガン全土は政府側の治安機能が失われ、タリバン戦闘員が支配する。同委関係者がオーストラリアのメディアに語ったところでは、クダダディ選手は自分がアスリートと知られることを恐れている。同委に送った動画メッセージで「家に閉じ込められた状態。安全に買い物にも行けない」と嘆いている。
西部ヘラート出身。2008年北京五輪でアフガンに初のメダルをもたらしたテコンドー男子選手に憧れ、競技の道に。東京パラリンピックに出場が決まって「わくわくした」。だが、準備期間が短く、練習場所も公園や裏庭などに限られたと伝えられる。
故郷がタリバンに制圧される中、カブールの親類宅に身を寄せ、東京行きを待ち続けた。ロイター通信によると、16日に出発し、17日に日本に到着する予定だったが、15日の政権崩壊の混乱で航空便がストップ。同委関係者は、過去のタリバン支配下で女性は競技に出られなかったと指摘し、「胸が痛む。初のテコンドー女子選手となるはずだった」と肩を落とす。
ただ、女子49キロ級があるのは9月2日。クダダディ選手は「私は東京パラリンピックに参加したい。手を取って助け出してほしい」と動画メッセージで必死に求めた。「アフガン人女性の出場権を簡単に奪わないでほしい」と国際社会に呼び掛けている。
選手団のもう1人は、地雷で左腕を失った陸上の男子選手だ。2人は「希望と平和のメッセージ」(IPC)を携えて24日の開会式で入場行進するはずだった。道が閉ざされれば、タリバンによる女性差別を背景に不出場となった00年シドニー・パラリンピック以来の事態となる。(時事)