日本遺族会の海外慰霊事業、コロナで今年も中断
「参加は時間との闘い」、来年度は国内変更も検討へ
第2次世界大戦の戦没者の子が元戦地で慰霊や交流を行う日本遺族会(東京都千代田区)の派遣事業が、今年も中断していることが14日、同会への取材で分かった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、現地への入国や帰国後の行動の制限が続くため、一部事業の中止を決めた。
同会は「遺児は平均80歳前後で、参加は時間との闘いだ」としており、来年度は慰霊事業の国内実施も検討する。
昨年から中断が続くのは、同会が1991年度から主催する「慰霊友好親善事業」。父親らが戦死した遺児が、第2次世界大戦で激戦地となった旧満州(現中国東北部)や太平洋のパラオ諸島、マリアナ諸島などを訪れ、慰霊や住民との交流を行う事業で、これまでに延べ1万6000人近くが参加した。
同会によると、新型コロナの感染拡大を理由に2019年度は4事業、20年度は全19事業が中止となった。今年度は8月中旬~来年3月末に計19事業が予定され、参加者900人を募集していた。
ただ、渡航先となる旧満州やミャンマーなどでは、入国・帰国後の待機などの行動制限が続いている。外務省も渡航中止勧告などを出して注意を呼び掛けている。
こうした事情を考慮し、同会は今年度について、8~11月の9事業の中止を決定。11月~来年3月にパラオ諸島やフィリピンなどで計画する10事業は実施に向け調整するが、感染収束の兆しは見えず、中止の恐れもあるという。
日本遺族会会長の水落敏栄参院議員は「感染拡大が続く場合、海外事業を続けるのは難しい。代わりに沖縄や硫黄島(東京都小笠原村)での慰霊事業ができないか検討したい」と話している。