自宅検査で感染拡大防げ、10万人にキット配布


神奈川県が実施、陽性と分かった県民の行動自粛に期待

自宅検査で感染拡大防げ、10万人にキット配布

神奈川県が希望者に無償配布を始めた新型コロナウイルスの抗原検査キット=11日、神奈川県庁

 新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない中、神奈川県は7月末から、希望する県民に抗原検査キットの無償配布を始めた。陽性と分かった県民が通勤や通学を控え、他人への感染を防ぐ効果を期待。全国の自治体でも珍しい取り組みで、黒岩祐治知事は「神奈川モデル」としてPRする。

 抗原検査は熱やせき、のどの痛みなど風邪症状のある人が、鼻の粘膜を綿棒でぬぐい、コロナかどうかを確かめるもの。試薬により約45分で結果が判明。陽性であれば、医療機関などの受診につなげる。県は自宅で失敗しても再検査できるよう、2回分を1セットにして希望者に郵送を始め、これまで約3000人に届いている。

 政府も学校などに抗原検査キットの配布を始めたが、神奈川モデルは自宅で気軽にできるのが売りだ。配布から約1週間の時点で、体調不良を感じた39人がキットを使い、6人の陽性が判明した。

 潜在的な感染者を掘り起こすため、陽性者は増えるが、県の阿南英明理事(医療危機対策担当)は「これまでコロナの自覚無しに感染を広げていた人が、陽性の判明を受けて通勤・通学を控えるため、最終的には感染者が減る」と説明する。

 県は、アンケート調査で配布を希望した約10万人にキットを順次送る方向だ。将来的には全県民に行き渡り、「家庭の体温計のように気軽にセルフチェックに使ってほしい」(阿南氏)。

 これまでのコロナ対策は、重症化しやすい高齢者対策に力点を置いてきたが、感染者数全体の減少にはつながらなかった。県はキットの配布を通じて、就学・就労世代の感染抑制を重視する戦略に転換する。