似島の歴史継承へ資料館、住民有志が設置


戦時に検疫所や臨時の野戦病院、将来を考える材料の一つに

 

似島の歴史継承へ資料館、住民有志が設置

「似島平和資料館」を設けた似島歴史ボランティアガイドの会の宮崎佳都夫会長=7月25日、広島市南区(時事)

 広島港の沖合約3キロの瀬戸内海に浮かぶ似島(広島市南区)。日清戦争以降、旧日本軍の帰還兵らの検疫所や捕虜収容所などが置かれ、広島に原爆が落ちた直後には臨時の野戦病院に多数の負傷者が運び込まれた。こうした島の歴史を継承したいと、住民有志らが4月、「似島平和資料館」を設けた。

 「この辺りからも遺骨が見つかった」。有志らでつくる「似島歴史ボランティアガイドの会」の宮崎佳都夫会長(73)は、資料館がある周辺を指し、こう説明する。原爆により、似島には1万人余りの負傷者が運ばれたとされる。多くは命を落とし、火葬が追い付かず、そのまま埋葬された遺体も数多くあった。同会が開設した資料館は、戦後の発掘調査で遺骨や遺品が発見され、その後に「慰霊の広場」として整備された一角にある。

 宮崎さんは「ぽんと『8月6日』があったわけではない。そこに至るまでどんな歴史や過程があったかを知ることが大事」と強調。戦争と島の関わりをたどりながら、平和に向けて「将来どういうふうにしていったらいいかを考えてもらう材料の一つになればいい」と話す。新型コロナウイルスの影響で、資料館は感染状況が落ち着くまで休館にしている。