乙黒拓斗、金獲得で伝説のレスラーにまた一歩


秘めた目標、「世界王者5回」恩師の高田さん超えへ

乙黒拓斗、金獲得で伝説のレスラーにまた一歩

レスリング男子フリースタイル65㌔級で金メダルを獲得し、ガッツポーズする乙黒拓斗=7日、千葉・幕張メッセ

乙黒拓斗、金獲得で伝説のレスラーにまた一歩

高田裕司さん

 レスリング男子フリースタイル65キロ級、乙黒拓斗選手(22)=自衛隊=は、秘めた目標を持つ。1976年モントリオール五輪と世界選手権で計5回頂点に立った母校・山梨学院大の恩師、高田裕司総監督(67)の記録超えだ。東京五輪で金メダルを獲得し、レジェンドへの歩みを進めた。

 拓斗選手は、二つ上の兄圭祐選手と幼い頃から父正也さん(47)の英才教育を受けた。同大監督の小幡邦彦さん(40)は高田さんと共に、小学5年から拓斗選手の成長を見守ってきた恩師の一人。「基本ができていて、間違いなくトップになると思った」と振り返る。

 エリートアカデミーを経て6年ぶりに故郷へ戻った教え子の一層の努力には、目を見張るものがあった。アテネ五輪出場経験もある小幡さんは「自分も練習好きでしたが、拓斗から見るとかわいいもの」。レスリング場の人影に気付きのぞくと、授業の合間にロープを使って一人練習する姿が。トレーニング室に顔を出せば、「もう4時間こもっているけど、大丈夫?」と事務員に心配された。

 正也さんは「小学生の頃は、帰ったら時間がないからと、昼休みに校庭で走り込みをしていた」と明かす。大学時代の一時期までは「食事、洗濯、睡眠以外、ほぼレスリング漬け」だった。

 小幡さんは「高田先生の記録を抜くのは拓斗をおいて他にない」と断言する。日本男子勢で最多金メダルを誇る高田さんの世界王者第一歩は、74年の世界選手権。当時20歳6カ月の日本男子最年少で優勝したが、拓斗選手は2018年、19歳10カ月で制し、44年ぶりに記録を塗り替えた。

 「先生の記録を抜く」。五輪決勝は残り十数秒での逆転劇で勝利。高田さんも才能を認める教え子の挑戦は、緒に就いたばかりだ。