空手男子組手の西村拳、「残り0秒」の悲劇


「気の緩みがあった」、逃げ切りを図るも1-3の逆転負け

空手男子組手の西村拳、「残り0秒」の悲劇

空手の男子組手75キロ級予選でウクライナの選手と対戦する西村拳(右)=6日、日本武道館

 西村の目の前にあったメダルが、するりと逃げていった。

 引き分けでも銅以上が確定する1次リーグ最終戦。1-0で逃げ切りを図り、場外へ逃れようとした瞬間に上段蹴りを受けた。モニターに表示された残り時間は「0秒」。時間内だったと判定されて1-3の逆転負け。「気の緩みがあった。自分を殴ってやりたい気持ち」と悔やみ切れない様子だった。

 元世界王者の父を持ち、足技を武器に2018年世界選手権で銅メダル。生い立ちと華麗なスタイルで「空手界のプリンス」と称される。

 代表枠を争った仲間たちの思いを背負って臨んだからこそ、「メダルは最低ラインだった。結果で恩返しをしてこそ、勝負の世界。勝ちをつかめなかった僕はふがいない」。支えてくれた人たちに対し、申し訳ない気持ちが胸に広がった。