男子スポーツクライミングの楢崎智亜は4位
崩れた優勝への構想、先行できず1点差でメダルを逃す
五輪初代王座に向け、楢崎には描いた構想があった。「スピードとボルダリング。その二つでほぼ優勝を決める」。だが理想通りに進まなかった。
スピードは、予選でトップだった選手が決勝を棄権。7人中1番手のタイムとなった楢崎は、十分に1位を狙えた。しかしトーナメントの決勝序盤で足を滑らせて2位。「自己ベストを更新して勝ちたい」との欲が出たという。
ボルダリングでは、得意なはずのダイナミックな動きを求められる課題を完登できず3位。決勝進出者はリードの巧者が多く、楢崎は6位の高度に終わった。
2019年の世界選手権でボルダリングと複合の2冠。「いい流れ」を実感していた分、五輪延期が決まった瞬間は「今年(20年に)やりたかった」という思いもあった。それでも「また一つ、強くなって挑める」と切り替え、3種目の総合力を高めてきた。
開業医の父を持ち、コロナ禍での大会開催に複雑な思いを口にすることもあった。「クライミングの知名度や人気を上げていきたい」との使命感を抱きながら、優勝候補の重圧も感じていた。
「ニンジャ」の愛称で知られる日本のエース。競技の実施が決まってから5年間待った舞台は「会場や選手の空気感が普段と全然違う。いつも通りのパフォーマンスを出すのは難しかった」。3位とわずか1点の差でメダルを逃す結末となった。