金の四十住さくら、楽しくひたむきに大技を磨く
母との約束を守り密度の高い練習に励む、宣言通りの金
真夏の東京に満開の桜が咲いた。四十住さくら(ベンヌ)がスケートボード女子パークで宣言通りに金メダルを獲得。「夢で滑って金メダルを取った感じ」。19歳はそう喜びを表現した。
すり鉢状にくぼんだ複雑なコースで45秒間自由に滑り、3回の演技のうち最高点で争う。四十住は決勝で技の難易度を上げ、空中で1回転半する「540」を1回目で2度成功。2、3回目はミスがあったが、最初の60・09点は最後までライバルに破られなかった。ほろ苦さも残ったが、「結果は咲きました」と笑った。
「540」は約2年かけて習得した大技。転機になったのは2019年の夏だった。ブラジルのプロスケートボーダー、サンドロ・ディアスに2日間だけ直接指導を受ける機会を得た。「目の前で見られたことが一番大きかった」。初めて生で見たことで、大きなヒントを得た。動画に撮った映像を繰り返し見ながら練習し、昨年3月、ついに着地に成功。五輪が1年延期になったことも追い風となり、時間をかけて自分のものにした。
周囲のサポートも大きかった。年の離れた兄、麗以八さんの影響で小学6年から板に乗り始め、自宅のある和歌山県から神戸市内のパークに毎日通うようになった。往復3時間、母の清美さんが車を運転。時間も費用もかかるため、「一日を無駄にしない練習をする」と親子で約束を交わした。昨秋には地元の人の協力で自宅近くにプライベートの練習場が完成。気軽に行けるようになっても母との約束を忘れることなく、変わらぬ姿勢で密度の濃い練習に打ち込んだ。
スケートボードを広めようと、クラウドファンディングで資金を募り、東南アジアにボードを贈る活動をしたこともある。自国開催で採用された競技での金メダルは何よりのアピール。「とにかく楽しいから、もうちょっとスポーツとして見てほしい」。ひたむきさで手にしたメダルを胸に、初代女王は願った。