村上茉愛、笑顔で締めくくり「自分に金メダル」
女子57年ぶりの銅メダル「体操人生で一番いい演技」
万感の思いを込めて村上がフロアを舞った。表彰台へミスが許されない中、持てる力を出し切って日本女子57年ぶりの銅メダル。「体操人生で一番いい演技だった。自分で自分に金メダルをあげたい」。最高の笑顔で今大会を締めくくった。
ゆかは2017年世界選手権で日本女子63年ぶりとなる頂点に立った得意種目。7月25日の予選は得点を伸ばせず、13点台にとどまった。19年には腰の故障によるブランクがあり、「自分が代表に入っていない間に、いろいろな人が強くなっている」と自信を失いかけた。しかし、冷静に演技を見返し、着地が厳しく判定されているとみるとすぐに修正。その後は団体総合決勝、個人総合決勝の演技で感覚をつかんだ。
この日は14点以上の演技が続いた後、6人目で登場。これまでのスコアではメダルに届かない状況だったが、自信はあった。立ち上がりのターンの後、代名詞になったH難度のシリバス(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)は完璧に近い着地。他の宙返りも跳ねを最小限に抑えた。
アクロバチックな技だけでなく、ターンやジャンプでも得点を上げるため、今年に入ってから見直した演技構成は隙がなかった。最後の後方屈身2回宙返りを決め、右手を前へ差し出してポーズを決めた時には自然と笑みがこぼれた。
日本女子体操界の歴史に名を刻み、「快挙を成し遂げられるアスリートになりたかった」と誇った。大会中にインターネット交流サイト(SNS)で誹謗(ひぼう)中傷のコメントに心を痛めて涙を流したこともあったが、最後は笑顔。集大成と位置付けていた今大会を終え、「もうちょっと落ち着いたら答えが見つかると思う」。リオデジャネイロ五輪後、女子の先頭に立って戦い続けた5年間。ひとまずは余韻に浸り、心と体を休める。