史上初、男子走り高跳びで金メダリストが二人
「ジャンプオフ」を行わない選択、友情と尊敬が生んだ珍事
1日に行われた東京五輪陸上の男子走り高跳び決勝で、金メダリストが二人となる珍事が起きた。
ムタズエサ・バルシム選手(30)=カタール=とジャンマルコ・タンベリ選手(29)=イタリア=は、ともに2メートル37までの高さを全て1回で成功し、2メートル39は3度失敗した。その後、二人は決着するまで追加試技を行う「ジャンプオフ」を行わないことを選択。満面の笑みで固く抱き合い、喜びを分かち合った。
バルシム選手は「お互いに目を見て分かった。それ以上は必要ない。二人とも十分やったと。心からそういう瞬間があった」と振り返った。ライバルであり、仲の良い友人でもある二人。互いに大きなけがを乗り越えて、この場に立ったことを理解していた。
男子走り高跳びで頂点を分け合うのは五輪史上初めて。タンベリ選手は「金メダルを共有するのはバルシムだけ。一生をかけて苦労してきた二人だからメダルを共有できる。神様がいるのなら、魔法のような夜だ」。特別な友情があり、競技者として尊敬の念を抱いているからこその出来事だった。
規則では「当該競技者がもうこれ以上跳躍しないと決めた場合を含みジャンプオフが実施されない場合、同成績により第1位となる」と定められている。記者会見で優勝者が二人となったルールについて問われ、バルシム選手は言った。「スポーツマンシップの精神だと思う。歴史がつくられた。私たちが追っているのは金メダルだけではない」