多士済々の日本代表、「決闘」制し金メダル
フェンシング男子エペ団体、3連覇中の仏を破って勢い
マスクを取った加納に仲間たちが駆け寄り、一斉に抱きついた。強豪を連破し、堂々の金メダル。「フェンシングで金を取ったことはまだない。取るのは僕ら」。準決勝後に宣言した山田の言葉通り、日本の男子エペ陣が歴史的快挙を成し遂げた。
決勝のROC戦。1人目の山田からリードを奪い、8人目までに4点をリード。アンカーはチーム最年少23歳の加納。スピードで上回って着実に得点を重ね、最後は接近戦で一瞬先に相手を突き、勝負を決めた。
快挙を大きく後押ししたのが準々決勝だった。五輪3連覇中のフランス戦。日本は元世界ランキング1位の見延に代わり初戦の途中から抜てきされた宇山に加え、山田と加納が3度ずつピスト(試合場)に立った。終盤まで見事に食らいつき、2点差でバトンを受けたのがアンカーの加納。元世界王者ボレルと一進一退の攻防を繰り広げ、残り1分余りで同点。一気に畳み掛け、劇的な逆転勝ちを収めた。
日本では五輪2大会メダリストの太田雄貴の活躍によりフルーレが注目されてきたが、競技の起源である「決闘」により近く、攻撃範囲が全身に及ぶエペは欧州で最も競技人口が多い。日本勢は2015年に見延がワールドカップ(W杯)個人で優勝し、触発されるように山田や加納も国際舞台で頂点に立った。19年3月にはW杯団体初制覇。十分な底上げはできていた。
手足が長い山田、変則的な攻撃も得意な宇山、小柄ながら剣さばきとスピードが秀でた加納。才能が異なるメンバーの力が一つになり、自国開催の特別な舞台で大輪の花を咲かせた。