金メダルの素根選手、「休む勇気」知った成長


「3倍努力」を掲げて稽古、腰痛や熱中症に陥ったことも

金メダルの素根選手、「休む勇気」知った成長

柔道女子78㌔超級準々決勝で勝利した素根輝選手(上)=30日、日本武道館(時事)

 「3倍努力」を掲げて稽古に打ち込んだ。柔道女子78キロ超級で金メダルを獲得した素根輝選手(21)=パーク24=。理想の柔道を追い求めるあまり、腰痛や熱中症に陥ったことも。努力する才能を知っているが故に、恩師らが諭したのは「休む勇気」だった。

 田主丸中(福岡県)の恩師、黒岩浩隆さんも、南筑高(同)の松尾浩一監督も手を焼いた。「休むことを知らない」(黒岩さん)ためだ。素根選手自身も「無我夢中で強くなりたい思いで、とにかく追い込んだ練習をしていた」と語る。

 「けがはどげんか」。黒岩さんは今も試合が終わるたびに、まず体調を尋ねる。中学時代、「3倍努力しないと勝てん」と必死に技を練習した素根選手にとって、一番のライバルは自分。一本を取る柔道にこだわり、大内刈りや体落としなど技の幅を広げ、着々と力を付けていった。

 一方、あまりの練習量に「休む勇気も必要」と諭しても、不安から目の届かない自宅でトレーニングを続けた。腰痛に悩まされる素根選手を整形外科などに連れて回り、「疲労が原因」と診断されたこともあった。

 松尾さんも「勝った試合に満足しない。高過ぎる理想を追い求めるところがあった」と証言する。熱中症になっても稽古を続けようとするのを止め、介抱することもしばしば。代表合宿に送り出す時は「無理するな」「やり過ぎるな」が口癖だった。

 五輪の代表内定まで突っ走った素根選手だが、柔道内定第一号となった直後の2019年暮れ、年末年始の稽古に誘った黒岩さんに「正月はゆっくり休みます」と告げた。「初めて休むと聞いて、五輪を決めた以上にうれしかった」。黒岩さんは教え子の成長をかみしめたという。