柔道男子の原沢久喜、二つの無念を晴らせず


リオ決勝で屈したリネールと3位決定戦で再戦も完敗

柔道男子の原沢久喜、二つの無念を晴らせず

柔道男子100㌔超級準決勝の原沢久喜(右)=30日、日本武道館(時事)

 こんな形で再び対峙(たいじ)するとは思っていなかっただろう。原沢は準決勝で金メダルへの道が途絶え、3位決定戦へ。相手は前回リオデジャネイロ五輪の決勝で屈したリネールだった。「気持ちを全てぶつける」と意気込んだが、見せ場なく延長で指導三つの反則負け。完敗だった。

 準決勝は、2年前の世界選手権決勝で敗れたクルパレクの返り討ちに遭った。効果的な技を出せないまま開始から8分に近づくころ、相手の払い腰をこらえ切れず、技ありを奪われた。「絶対に優勝するという強い気持ちと執念で戦い抜こうと決めたが、力が及ばなかった」と声を絞り出した。

 この5年間は苦しい時期の方が多かった。2017年は早々に敗退する大会が多く、疲労が抜けにくくなるオーバートレーニング症候群の診断も受けた。翌年、当時の所属先を退職。退路を断って再び奮起し、たどり着いた2度目の五輪は表彰台も逃す結果となった。

 五輪で初めて柔道が実施された1964年東京大会。日本は3階級を制しながら無差別級のみ金を逃し、本家敗北の大会として受け止められた。

 日本男子の「聖域」である無差別級は、現在の五輪実施階級で言えば100キロ超級ということになる。原沢自身が引きずった5年前のリオ大会と、日本柔道界が屈辱をかみしめた57年前の東京大会。二つの無念を晴らすことはできなかった。