浜田尚里が寝技で栄冠、遅咲きの花が満開
圧巻の全4試合一本勝ち、サンボと二刀流で極めた寝技
抑え込み技、関節技、絞め技を駆使しての頂点。30歳にして臨んだ初の五輪は「寝技の女王、ここにあり」と言える圧巻の全4試合一本勝ちだった。
2019年世界選手権で連覇を阻まれたマロンガとの決勝は、1分余りで終わった。開始早々の大内刈りをしのぐと、うつぶせになろうとする相手を帯取り返しの要領で横向けに。絡めた腕を相手の柔道着を使って固め、脚を抜いて抑え込む、教科書のような手順だった。「寝技で勝ち上がれたのでよかった」。いつも通り控えめな口調ながら、誇らしげだった。
無名だった高校時代から寝技を磨き、大学ではロシア発祥の格闘技、サンボも始めた。関節技はポイントの価値も高い。柔道でも活躍した日本サンボ連盟の松本秀彦強化委員長は「倒してからすぐに関節技へ移行する動きが必然的に身に付く」と意義を説明。浜田は寝技のレベルを一層高め、サンボでも世界選手権を制するに至った。
近年は審判が寝技の攻防を長くみる傾向になり、「自分にとってはすごくプラスになった」。流れるような寝姿勢の動きは高い技術に裏打ちされ、主審に「待て」をかけにくくさせている。
ベテランにとって五輪延期の影響は少なからずあり、「2020年にできるのが一番良かった」と話したこともある。コロナ禍では密着度合いが増す寝技の稽古をするのに葛藤もあった。
それでも、地道に築き上げてきた武器は崩れなかった。遅咲きの花がついに満開。まばゆい輝きを放った。