柔道の田代未来選手、届かなかったメダル


リオで敗れた宿敵に雪辱誓うも、対戦もできず2回戦敗退

柔道の田代未来選手、届かなかったメダル

田代未来選手(時事)

 柔道女子63キロ級、田代未来選手(27)=コマツ=は前回リオデジャネイロ五輪でメダルを逃した。金メダルを期して臨んだ東京五輪は、まさかの2回戦敗退。またしても悲願のメダルに届かなかった。

 初出場のリオ五輪は「なんて輝いた舞台なんだろう」と感じた。しかし、準決勝で宿敵クラリス・アグベニェヌ選手(28)=フランス=に負け、3位決定戦も破れ5位。両親や恩師、チーム関係者の前を通った時、礼をしたまま顔を上げることができないでいると、「顔上げろ。前を向け」と母の涙声が響いた。

 母ちず子さん(54)の目には、選手村に戻るタクシーの中、目を腫らしながら心配掛けまいと笑顔を取り繕う娘の横顔が焼き付いている。淑徳高時代の恩師、酒井健弥監督(51)は「この悔しさを忘れるな」とLINEで送った。

 母も恩師もリオ後、随分強くなったと感じていた。古傷だった手首の手術から復帰すると「柔道できることに感謝している」と前向きな言葉が多くなった。2年前の世界選手権でアグベニェヌ選手と対戦した決勝は、破れはした。酒井さんは「組み手勝負していれば勝っていたと思う。でも、選択しなかった。借りを全部返そうとしたんです」と語る。

 アグベニェヌ選手との対戦成績は1勝9敗。五輪の決勝が雪辱の舞台となるはずだったが、宿敵とまみえることすらかなわなかった。