アスリートが集結、今こそスポーツの力を!
各国選手がマスク姿で異例の行進、心に訴えかける開会式に
式典を見守る観客が国立競技場のスタンドにいない。1年延期の末、開催にこぎ着けた東京五輪。新型コロナウイルスの感染拡大のため、異例ずくめとなった大会を象徴する開会式が始まった。
開幕へのカウントダウンが「0」となり、競技場の屋根の形と重なる。花火が打ち上がった後に場内は暗転。黙々とトレーニングする女性が照らし出された。コロナ禍で1年以上、不安や焦りを感じて過ごした選手たち。孤独と闘いながら鍛えてきた選手を示す数々の光がつながっていく。同じ境遇の世界中のアスリートが、ようやく目指していた場所に集まった。
日本が誇る木工技術をモチーフにした演出。大勢の大工職人が踊る中、木製の大きな五つの輪が中央に運ばれ、寄せ木細工のように五輪マークが完成した。入場行進はドラゴンクエストなど人気ゲームの音楽に合わせてスタート。
国・地域名のプラカードは漫画のせりふのようなデザイン。伝統工芸とサブカルチャーを組み合わせた日本らしさが表現されていた。
開会式直前。過去の言動が問題視されて楽曲担当の小山田圭吾氏が辞任。演出全体を調整したディレクターの小林賢太郎氏は前日に退場となった。延期決定前の計画よりも簡素化を目指したセレモニー。演出は控えめで華やかさには欠けていたが、心に訴えかける内容となった。
秋の晴天の下、祝祭ムードに包まれた57年前の東京五輪とは対照的な印象を残す夜となった。
ただ、距離を取ってマスク姿で入場する各国選手の表情は総じて柔らかく、待ちに待った舞台に臨む喜びにあふれていた。祝福される大会になるかどうかは、彼らが体現するスポーツの力に懸かっている。「今こそスポーツの力を」。大会組織委員会の橋本聖子会長は静かに訴えた。