池田晶子さんの夫「妻の頑張りを知ってほしい」
妻が京アニ放火殺人で犠牲に、青葉真司被告を恨まないで
京都アニメーション放火殺人事件の発生から2年となるのを前に、亡くなったアニメーターの池田晶子(本名・寺脇晶子)さん=当時(44)=の夫(48)が取材に応じた。子供に配慮し、これまでインタビューに応じてこなかったが、「頑張りを皆さんに知ってもらいたかった。晶子のことを覚えておいてほしい」と心境を明かした。
池田さんはテレビアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」(2006年)や「響け!ユーフォニアム」(15年)でキャラクターデザインを手掛け、京アニの取締役も務めた。質の高い作画が高い評価を得ており、生み出したキャラクターは多くの人から愛された。
庵野秀明監督のSFアニメ「トップをねらえ!」に触発され、アニメーターの道に。「親しみを持ってもらえるキャラクターをつくりたい」と、一つ一つのデザインにとことん向き合った。努力を惜しまず、休日もひたすらデッサンで腕を磨いた。「アニメでみんなに元気を与えたい。そして楽しんでほしい。それが晶子が描く理由だった」
晶子さんは、経験を積み画力が向上しても、経済的不安から若者がアニメーターを続けられない状況を目の当たりにしてきた。「結婚、出産をしても仕事を続けられるよう、自分が何とかしなければ」。常にそう語っていたという。
事件の発生は知人からの電話で知った。仕事を中断して現場の第1スタジオ(京都市伏見区)に向かったが、夜になっても晶子さんと連絡が取れず、駄目なんだろうと覚悟した。
小学生の子供にどう前を向かせるか。事件後はそればかりを考えたという。発生から数週間は毎日子供と現場近くに通い、スナック菓子やコーヒーを供えた。子供は「ママありがとう」「ママたべてね」と付箋に書いて添えた。
「自分が恨むと子供も恨むことになる」と考え、殺人などの罪で起訴された青葉真司被告(43)を恨まないよう自分に言い聞かせている。「子供に対して反省の弁がほしい」。そう静かに訴えた。