薬物乱用で議論、「ダメ。ゼッタイ。」は駄目?
標語が回復を妨げる? 「予防に効果」「治療へ悪影響」
「ダメ。ゼッタイ。」。薬物乱用防止を呼び掛け30年以上使われてきたこの標語をめぐり、依存症患者の回復を妨げるのではないかとの議論が、厚生労働省の検討会で交わされた。26日は乱用根絶を訴える国際麻薬乱用撲滅デー。標語使用に反対、賛成それぞれの立場から話を聞いた。
標語は1987年8月、発足したばかりの麻薬・覚せい剤乱用防止センターが啓発活動推進のため策定。以来、ポスターなどに用いられてきた。
依存症患者の治療に取り組む国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦・薬物依存研究部長は、「ダメ。ゼッタイ。」が、それ以前にあった「覚せい剤やめますか、それとも人間やめますか」という標語の延長として捉えられがちだと主張。依存症患者の自己嫌悪などを増幅し、治療開始を遅らせていると説く。薬物を使わせない予防活動は大事だとしつつ、「当事者を無視した行き過ぎた啓発は、逆に偏見を強化する」と批判する。
最近は市販薬や処方薬といった違法薬物以外による依存症患者が増えており、「絶対駄目、ではなく、市販薬などの適正使用を教えることが必要ではないか」と主張した。
一方、麻薬・覚せい剤乱用防止センターの藤野彰理事長は、批判は「誤解、曲解に基づくものだ」と強く反論する。標語は薬物をまだ使っていない人に向けた予防目的のもので、「人間やめますか」とは明確に違い、偏見を生む内容ではないと主張する。
「まずは始めないことが最も大切」と予防の必要性を強調。「ダメ。ゼッタイ。」は「初めて乱用者ではなく、一般の人に向けてできた言葉」であるため、34年間も使われてきたと指摘し、「もっと良い言葉があれば、それも使う」と話した。標語が悪影響を及ぼすかの調査、研究を依頼しており、悪影響があるのなら誤解を正していくとも訴えた。