語り部が聖火つなぐ「大川小を知るきっかけに」


震災で娘を失った鈴木典行さん、「真衣と一緒に走れた」

語り部が聖火つなぐ「大川小を知るきっかけに」

聖火ランナーを務める鈴木典行さん=19日午後、宮城県石巻市(代表撮影・時事)

 東日本大震災の津波で宮城県石巻市立大川小学校に通っていた娘を失い、語り部活動を続けている会社員鈴木典行さん(56)が19日、東京五輪の聖火ランナーとして同市を走った。「自分が走ることで大川小を知ってもらい、現地を訪れて災害について学んでくれれば」。走る姿を通して、震災の教訓が世界に伝わることを願っている。

 海から約3・7キロの場所にあった大川小では地震後、教員の指示で児童らは校庭に約45分待機。避難を始めた直後に津波に襲われ、児童74人と教職員10人が犠牲となった。学校近くの斜面の泥の中から2日後に見つかった児童の中には、鈴木さんの次女真衣さん=当時(12)=もいた。

 「物が壊れても仕方ないけれど、命は壊れちゃだめだ」。鈴木さんは子供たちが巻き込まれた状況や教訓を伝えるために、震災直後から語り部活動を続けている。震災遺構として整備中の大川小には毎年多くの人が訪れ、2019年には約1万5000人に話を伝えた。「大川小では何が起きて、どう行動しなきゃいけなかったのか。話を聞いた人は他の人に教訓を伝えていってほしい」と力を込める。

 リレールートに大川小が含まれていないことを知り、「自分がトーチを持って、真衣や子供たちと走ろう」とランナーに応募した。19日は、震災が起きた日に真衣さんが家に忘れていった名札をポケットに入れて走った後、トーチを持って大川小を訪れた。鈴木さんは校舎に向かって手を合わせ、「真衣と一緒に走れたと思う。こんな大役はもう一生ないだろうし、貴重な機会だった」と笑顔を見せた。